日本医学会分科会利益相反会議

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議事要旨

第5回日本医学会分科会利益相反会議:総会

基調報告:我が国のCOIマネージメントの現状と動向

曽根 三郎(日本医学会利益相反委員会委員長)

 「日本医学会 医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」が2011年に公表されたのを受けて、各分科会はCOI指針を策定し、会員が産学連携活動に従事する中で論文や講演などでの発表においてreporting/publication biasが生じないよう、関係する企業との金銭関係の透明化を図り、社会から疑惑を招かない仕組み作りを行うように求めてきた。その結果、毎年20%の増加率でCOI指針が策定されており、2013年10月時点で118分科会の72%(85分科会)が策定し、臨床系分科会でほぼ90%に達しており、産学連携活動に取り組む学会のほとんどがCOIマネージメントに取り組んでいる。
 しかし、2013年度は、バルサルタンを用いた医師主導の大規模臨床試験論文がCOI申告違反と人為的なデータ操作など、研究の質と信頼性を損なう事態となり、国際誌での公表論文の撤回や研究責任者の辞職へと発展し、産学連携の在り方についても多くの疑問を投げかけた。その後も企業の役務提供にかかる疑惑事案がいくつか露見した。このような事態を受け、全国医学部長病院長会議は「医系大学、研究機関、病院のCOI(利益相反)マネージメントガイドライン」を平成25年12月に公表した。日本学術会議は臨床研究の健全化に向けてCOIマネージメントおよび産学連携の在り方についても提言した。厚労省もバルサルタン事案を受けて再発防止を念頭に置いた、疫学研究・臨床研究に関する統合倫理指針案をまとめている。日本医学会も再発防止を図るために、COIマネージメントガイドラインの見直しを図り、その改定案を提示し、各分科会からのコメント、提案をまとめ、平成26年2月に改定した。
 主な改定ポイントは、研究結果に影響を与える可能性が想定される、関係企業からの資金提供だけでなく役務提供にかかる内容の開示法を明確にした。医薬品・医療機器の臨床開発には産学連携が必須であり、研究者自身が国際水準の倫理観を持って取り組んで行ける仕組み作りが大切であり、医学研究の健全化には行政、医学界、業界が情報交換しながら対応して行くことが喫緊の課題であることを強調したい。

スライド資料(PDF/2.03MB)