日本医学雑誌編集者会議 Japanese Association of Medical Journal Editors

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議事要旨

第2回日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)ならびに日本医学会分科会利益相反会議 合同シンポジウム:シンポジウム

閉会の挨拶

門脇 孝(日本医学会副会長)

 現在、日本医学会で利益相反の担当副会長を務めております、門脇です。本日のお話にありましたように、臨床研究は診療ガイドラインなどの根拠になり、わが国の医療の向上に必須な活動です。日本医学会、日本医学会連合のミッションの達成のためには、適切な臨床研究がさらに推進される必要があります。
 本日のシンポジウムは、臨床研究がいかに適切に実施され、発表されるかということを主眼にして、関連する日本医学雑誌編集者会議と、日本医学会分科会利益相反会議の合同会議として開催されました。利益相反管理は臨床研究のバイアスを廃し、臨床研究の信頼を得る目的のために行う必要があります。すなわち、利益相反管理を行うことによって、より臨床研究の質が担保され、社会からの信頼性が得られ、より良い診療ガイドラインの策定につながると考えられます。
 日本医学会のこの間のさまざまな活動によって、わが国の利益相反管理、あるいは研究倫理の向上について、いくつかの成果が本日も確認されたのではないかと思います。学会発表でのCOI開示についても、日本医学会などのガイダンスなどに従って、各分科会で取り組んでいただいていることが、アンケート等で良く示されています。現在は筆頭著者のみではなく全著者、また座長についても利益相反開示が求められています。このことについては、日本医学会分科会全体が合意をして作ったわけですから、できるだけそれに沿って運用する努力を、各分科会はぜひ強めていただきたいと思います。
 また、学会発表において、本来倫理審査を受けるべき臨床研究について、学会演題の登録時に倫理審査を受けていることを明記する仕組みが、日本外科学会、日本消化器外科学会等から提案をされてその方向性については異論が無いと考えています。それに基づき日本医学会の各分科会における演題登録時の倫理審査承認の明記の実施、あるいは試行的な実施が開始されています。日本医学会としてはさらにこれを推進していく必要があろうかと思います。
 また、診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンスについても、2017年3月に発表され、アンケートのなかでそれに基づいて適切な運用をする学会が増えているということで、大変心強い思いがします。策定委員就任の資格そのものを奪うことがなくても、利益相反がある個々の議決の投票権を認めないなど、適切な運用が行われてきているのではないかと思います。
 この1、2年間で、利益相反管理については相当進んできたのではないかと思います。日本医学会への要望として、利益相反管理や研究倫理についてガイドラインを策定するだけでなく、各分科会向けに教育研修がやりやすいような仕組みや、資材等を作ってほしいという要望があったかと思います。
 逆に、各分科会の側でも、研究倫理や利益相反についての教育研修を、たとえば専門医の取得や、あるいは更新などに入れていくといったことを、ぜひご検討いただければと思います。また、倫理審査委員会の質や、それから数にも大きな問題があり、全国医学部長病院長会議や日本医師会とも連携をしながら、わが国で倫理審査をより適切に、かつ比較的すみやかに受けられる制度設計をしてまいりたいと思っています。
 さらに、臨床研究法の下で臨床研究の実施が困難になったという意見が出されましたが臨床研究法とふまえた適切な契約に基づく適正な臨床研究の仕組みを推進していく必要があると思います。利益相反管理は研究のバイアスを廃し、研究の適正性を担保する、研究の質を高める方向へのインセンティブを持つものであり、またそれは同時に研究者を守り、研究を守る、そしてまた臨床研究が社会から信頼されるうえで必須のものであるという位置づけで、この問題に引き続き努力を強めてまいりたいと思います。
 本日は演者の先生方からすばらしいご発表をいただき、大変有意義な会になったのではないかと思います。本日の会を契機にして、各分科会がこの面での活動をさらに強めていただきたいということをお願いして、私の閉会の挨拶に代えさせていただきます。