お知らせ

平成25年6月10日

健康医療分野における研究助成のあり方について(緊急声明)
―「日本版NIH」構想と裾野の広い基礎研究の必要性―

日本生化学会 会長  石川冬木
日本分子生物学会 理事長 大隅典子
日本免疫学会 理事長 斉藤 隆
日本癌学会 理事長 野田哲生
日本神経科学学会 会長  宮下保司
日本細胞生物学会 会長 目加田英輔
日本ウイルス学会 理事長 柳 雄介

 現在、政府においては、産業競争力会議を中心に「日本版NIH」構想ならびに関連した法整備が議論されている。
 日本版NIHは、これまで、複数の省庁によって支援されていた医療分野の研究開発関連予算を一元化し、戦略的・重点的な予算配分を行うものであり、国として戦略的に行うべき実用化のための研究を基礎段階から一気通貫で管理し、実務レベルの中核機能を果たす独立行政法人を設置するとされている。これは健康長寿の出口に向けた我が国の医療の進歩を期するものであり、国民の健康・医療の飛躍的な向上にとって重要な役割を果たすと期待される。しかしながら、そのような一元化した研究開発体制の創設に関して、我々ライフサイエンス関連7学会は、以下のように考える。

1.少子高齢化社会の到来を迎えて健康長寿は国民の念願であり、国内の基礎的研究成果をより効率的に産業界へブリッジングすることを目的とした日本版NIHの創設は、今後の日本における優れた医療技術等の創出に大きく貢献すると期待される。我々ライフサイエンス領域研究者は、この日本版NIHが有効に機能することにより、我々の研究成果が日本社会の福祉向上に大きく寄与することを期待するものである。そのためにも、その創設に当たっては、学界・産業界を始めとする関係各分野の知恵を結集して、そのグランドデザインを作り上げることが重要である。予算規模では、モデルとする米国NIHの約十分の一となると予想される日本版NIHを、どのようにして国際競争力を有するものとするかに関する議論が必要である。

2.多くの優れた科学技術は、知的好奇心にはじまる研究成果から生まれたものであり、長期的に次々と産業化にむすびつくイノベーションを生み出すためには、異分野融合研究をふくめた裾野が広い基礎研究体制を維持することが必須である。日本版NIH構想で言われている「実用化のための研究の基礎段階」の前段階においても、このような間口の広い基礎研究が不可欠である。我々は、実用化を指向した一貫性・計画性のあるトップダウン型科学技術推進戦略のみが一人歩きすると、我が国の科学の発展は危機的状況を迎えかねないと危惧するものである。トップダウン型戦略とともに、アカデミアの自由な発想を鼓舞するボトムアップ型研究支援をより一層拡充させ、両者が密接に相互作用しながら研究を展開することが日本の未来に不可欠である。このような研究支援を削減して、応用研究を含む科学の発展は成立し得ないと考える。

 以上の我々の見解を、我が国のライフサイエンス研究プラットフォームの構築にあたって、十分に検討いただけるよう関係各位に要請するものである。

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