研究倫理教育研修会

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議事要旨

第1回研究倫理教育研修会

閉会挨拶

久道  茂(日本医学会副会長)

 本日は研究倫理教育研修会に、各分科会の方々ご出席いただきまして本当にありがとうございます。
 現在、日本医学会には123分科会がありますけれども、本日は97学会ということで、78.9%、約8割の学会に参加していただきました。研究不正に関わる背景、歴史、最新の情報までたくさんの情報が得られたと思います。各学会におかれましても、参考になったと思いますので、ぜひこれをご活用いただければと思います。
 北村先生のご講演のなかに研究不正は刑事罰とはならないというお話がありました。しかしながら、実際の現状を見ますと、研究不正と認定された方が辞職をしたり、研究費を返還したりといった事例が起こり、それに不服として名誉棄損の裁判が起こっていることも事実です。
 そういう時にどういうことが起こるかと申しますと、研究不正があるかどうかを調査する調査委員会が各機関・大学にあると思いますが、この場合は被告発者が自分で証明できない場合には、不正があったというような判断をされるのが普通です。
 ところが、名誉棄損ということで裁判になりますと、故意に行ったとされる合理的証拠は見当たらないので、研究不正があったとは判断できない。要するに、不正はなかったというような判断がされるのが普通です。いわゆる裁判の原則の「推定無罪」扱いをされることがあります。この辺が、非常に問題を複雑にしているわけですけれども、最低限この学会や研究機関は「疑わしきは襟を正す」ということが重要だと思っています。
 それでは、どうやって襟を正すかですが、実は2014年にある問題が起こったときに、日本医学会長・副会長の連名で、関係する学会に対して提言し、要するに、その不正研究に関わる学会の役員の方々の自浄作用を求めたということがありました。
 どうやって襟を正すかについては、その学会や機関の自浄作用能力が問われるのではないかと思います。その作用がうまくいったかどうかの評価は、司法ではなくて社会が判断することになるのではと思いますが、この問題はいろいろ複雑なこともありますので、今後の研修会のなかでも議論していただければと考えています。
 最後に座長、演者の先生方に御礼申し上げたいと思います。各学会でのご検討をぜひお願いして閉会の挨拶とさせていただきます。