研究倫理教育研修会

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議事要旨

第3回研究倫理教育研修会

統計学からみた論文不正

新谷  歩(大阪市立大学大学院医学研究科教授)

 倫理と統計の関りはかの偉大なメンデルの法則まで遡る。自然のありとあらゆる影響を受けたデータは、一定のばらつきを持つことが当然とされるが、近代統計学の父ドナルド・フィッシャーはメンデルのデータが極度に理論値に近すぎる「Too Good To Be True」という点を示唆し、チャンピオンデータを使ったデータ改ざんを世に問いかけた。ディオバン事件が世に出るきっかけとなったのも、背景データが不自然に揃いすぎているという点においてであった。
 データの捏造・改ざんの予防策として2015年より倫理指針にモニタリングと監査が義務付けられた。一方、いくらデータが正しくても臨床研究のデザインや統計手法が不適切なプロトコルで行われた臨床研究は信頼に値するとはいえない。データの信頼性を担保し、そして科学的に信頼性の高い研究を行うためには、今こそ、現場の医療研究者が正しく臨床研究手法や統計手法を学ぶことが必要である。

スライド資料(PDF/4.37MB)