研究倫理教育研修会

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議事要旨

第3回研究倫理教育研修会

「提言」、そして教材作成を通じた支援

市川 家國(信州大学特任教授)

 高い論文撤回の頻度から、わが国は研究不正多発国と見る向きがある。New England Journal Medicineを例として、論文撤回の理由はねつ造、改ざんを常とし、それに少しばかりの盗用があるが、わが国の臨床研究倫理審査委員会で主な審査内容となっている個人情報・インフォームドコンセントというものは無い。
 国際誌が求める規範は過去数年の間に目覚ましく刷新されており、政府ガイドラインや各機関のガイドラインと現行の国際規範との間には問題となる時間差が生じている。
 現在の欧米では研究結果の科学性と透明性の向上に焦点が置かれている点が目に付く。その背景には、生命科学系の実験における計画の稚拙さや人為的原因による再現性の驚くほどの低さがある。
 このような状況を是正すべく、近年、国際誌では殊に研究の再現性の改善を目指した投稿者への注文が増えている。すなわち、バイアスを回避するために、データの採取に先立ってサンプル数や統計方法、さらにはデータの取捨選択方法を予め決めておくといったことが、国際舞台での研究者の当然の規範としてルール化されてきている。今後のわが国から発表される医系論文がこうした規範を尺度として、国際誌上で審判を受け得ることになることを視野に、日本医学会連合は日本医学会とも連携しAMED支援のもと、会員を支援すべく分科会間で互換性のある教材の作りを目指す。研究者倫理学修は各研究機関、ファンディング・エージェンシー更には専門職資格審査機構等でも義務化される傾向にあるため、それらの義務化内容との共通化を目指し、研究者の便宜をはかりたい。