研究倫理教育研修会

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議事要旨

第5回研究倫理教育研修会

望まれる学会間の倫理指針および学習機会の共通化

市川 家國(信州大学医学部特任教授)

 研究発表にあたり、研究者が倫理規範を身に着けておくべきとの認識が各学会で広がりつつあり、それぞれに指針の作成や、倫理学修義務を設定する動きが近年出てきていたが、その一方、研究者は一般的に複数の学会に加盟しているという状況から、外科学会の動きを核として、医学会連合の研究倫理委員会では、共通の指針を作成して、研究者の便利を図るという企画を立てた。そこで、具体的な作業に入るべくこのたび、日本医学会連合加盟の129学会を対象に共通倫理指針とそれに伴う共通倫理学修についてアンケートをとらせていただいた。結果を要約すると以下のとおりである。

一方、昨年4月より「臨床研究法」が施行され、臨床研究の場では以下の点で混乱が生じており、共通指針の作成および倫理教材作成については、これらの混乱の行方を見守る必要が生じた。現場からの法に対する懸念は以下の点に要約される。
 1)適用範囲の理不尽な広さと曖昧さ
 2)研究者への過度な作業負担
 3)非現実的な費用負担の要求
 4)刑事処罰の存在
 こうした好ましからざる混乱の収拾に向けて日本医学会連合は、公正研究推進協会の協力を得て学会代表・現場の識者・法律家等の23名から成る「臨床研究法のあり方検討委員会」を新たに立ち上げ、議論を開始する一方、厚労省との担当官への申し入れの機会を設けた。委員会の基本となる考えは、国民の健康と衛生を目指すはずの臨床研究法ではあるが、その際にカギとなる研究のもたらす利益と害に関する推定に適切さを欠いた部分がある、というもの。背景には、臨床研究が国民にもたらしてきた利益に対して、生じうる害に対して過度に不安を覚える一部の意見の影響があったとも考えられる。委員会は今後も議論を加速させて、厚労省と交渉にあたる予定である。

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