研究倫理教育研修会

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議事要旨

第7回研究倫理教育研修会

臨床研究の有益性の向上に向けて

市川家國(信州大学医学部客員教授)

 近年の画期的な研究技術の進歩は、臨床研究におけるベネフィットの幅を大きく変え、これに伴って、欧米においては、被験者保護に関する考え方を従来の古典的なものから大分変化させてきている。
 「エビデンスに基づく医療」を目指す今日、そうした臨床研究のベネフィットとは、臨床上のエビデンスに寄与できる成果なのだが、成果の出口であり指標でもある論文内容に関するわが国への国際評価は長年極めて低いままだ。こうした特有な状況の原因には、新時代の臨床研究に関する知識を持つ研究者が少なく、研究計画の段階のみならず、倫理委員会を通じた研究の質向上の機会を失っていることも一つだ。研究計画者と言い、審査員と言い、多くの医学・医療の専門家が21世紀に入り発達した遺伝学・情報学・統計学の知識を得る機会を得ていないのが背景にあるとして、そうした研究者を対象として昨年来、希少な人材を集めて開始した新たなプロジェクトを紹介する。その一つが、従来の被験者保護を軸足としたチェックリストに並ぶ、クリニカルエビデンス確保のためのチェックリストである。