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日本医学会分科会活動報告ダイジェスト版

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日本医学会分科会活動報告のまとめ

部会

日本医学会分科会活動報告のまとめ(基礎部会)

 基礎部会では15の加盟分科会から活動報告をいただいた。基礎部会は、医学部・歯学部における教育・研究の基礎となる解剖学、生理学、生化学、薬理学などの基幹講座、様々な感染症やがんなどの疾患の発症メカニズムを扱う病因・病理学講座、さらに栄養学、遺伝学や神経系、筋骨格系の疾患を扱う分野など広範な基礎医学領域を網羅している。2023年度以降、コロナ感染が収束し、対面による学会活動が復活したことにより、加盟学会による活発な学術活動、国際貢献、社会貢献が実施されてきている。
 各加盟学会とも、学術集会を通じた会員の研究活動の活性化や交流の促進は言うまでもなく、次世代を担う若手研究者の育成、ダイバーシティーの向上に力を入れている。若手研究者に対する研究奨励賞など受賞制度、国際学会参加のためのTravel Award、海外留学支援制度や女性研究者への研究支援事業、女性会員の学会理事への積極的な登用など様々な取り組みが実施されている。いくつかの学会では中学、高校生にも発表の機会を設けることにより、より若い世代の研究人材の育成に努力している。学会間の交流活動も活発に行われ、合同学会の開催、合同シンポジウムの開催、市民公開講座の共同開催が多数企画され、関連学会間の学術活動の活性化につながっている。
 学会の国際活動については、学術集会での英語化の取り組みにより、海外からの参加者の増加と学術集会の国際化が進みつつある。さらに、世界的な関連学術団体との交流、中でもアジア・オセアニア地域の学術学会との交流活動は多くの加盟学会にて積極的に進められている。いくつかの国際的な学術学会においては、重要な役職を日本の加盟学会の会員が担っており、その運営に大きく貢献している。また、多くの学会で世界的に認知された英文機関誌が刊行されており、研究成果の発信、学術の発展に大きく貢献している。
 日本医学会への要望としは多くの分科会より分野横断的な学術交流の推進、学会間の共通の課題についての情報共有の推進があげられた。基礎医学分野の特に重要な課題としては医学部出身の研究者の減少があり、国に対して人材育成のため初期研修制度、専門医制度と研究活動を両立できる制度の提案の必要性が指摘された。さらに、大学における教育・研究体制の基礎となる教員や技術職員の確保、学会運営に必要な法的・倫理的な共通指針の策定についても要望があり、今後の日本医学会の活動の参考にしたい。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(社会部会)

 日本医学会社会部会は、登録順で、日本医史学会、日本法医学会、日本衛生学会、日本健康学会、日本保険医学会、日本医療機器学会、日本公衆衛生学会、日本衛生動物学会、日本交通医学会、日本体力医学会、日本産業衛生学会、日本農村医学会、日本矯正医学会、日本医療・病院管理学会、日本職業・災害医学会、日本医学教育学会、日本医療情報学会、日本疫学会、日本災害医学会、日本国際保健医療学会の20の分科会から成り、専門性の高い幅広い学問領域をカバーしている。各分科会は、医師に加えて、他の保健医療系、情報系、人文科学系等多様な人材によって会員が構成されており、女性会員が半数以上の分科会が3分の1を占めている。
 いずれの分科会も共通して、学術総会、学術雑誌の発刊、関連書籍の出版等を中心的な活動としており、半数以上の分科会において、国内並びに海外の学会との連携活動を実施している。国内の具体的な連携活動としては、社会医学専門医協会による専門医制度(臨床専門医制度の社会医学版)が挙げられる。その制度には、20分科会の内8分科会が参画し、また構成団体として日本医師会、日本医学会連合が加わっている。また、社会医学分野30学会から成る全国公衆衛生関連学協会連絡協議会において、日本医学会連合の11分科会がその中心的な活動を牽引しており、社会医学専門医協会と共に、情報交換、連携活動、人材育成を進めている。特に若手人材の育成に関しては、「若手の会」の結成と活動支援、国際学会への参加支援、外国人若手研究者の国内学術集会への参加支援、研究奨励賞、優秀論文賞等を実施する分科会が増えている。英文学術誌に関しては、社会部会からはEnvironmental Health and Preventive Medicine、Journal of Epidemiology、Journal of Occupational Health、Journal of Tropical Medicine(最新のIFがそれぞれ、4.7、3.7、2.6、2.1)といった、世界的に認知された学術誌が発刊されている。社会医学は、地域・職域団体、自治体、行政、政府との結びつきが強く、学問の推進とその成果の還元を積極的に進めている。コロナ禍においては、保健所、自治体への人的支援、各分科会からの国民への情報提供、提言等を積極的に行ってきた。
 日本医学会への要望として、基礎・社会・臨床に跨る分野横断研究(TEAMS事業等)、医学教育(衛生動物学、体力医学の充実も含む)、専門医教育、他の職種を含めた専門家育成、保健医療分野のDX・データベースの構築・連携とAIの活用、地球規模の環境問題への対応のさらなる充実が挙げられた。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(臨床部会臨床内科系)

 臨床内科部会では61の加盟分科会から活動報告をいただいた。いずれの学会も、学術的にも診療面でも、社会的にも大きく貢献していることが明らかであった。
 学術的には、多くの学会で顕著な業績があげられ、学会による疾患概念の整理・提唱、学会主導研究や診療実態調査の実施、大規模データベースの作成などが行われている。また、若手研究者の人材育成を目標とした報奨制度や助成金制度、海外留学のフェローシップも設けられており、継続的な研究推進に向けた取り組みが行われている。
 診療面でも、認定専門医制度の運用や、学会認定教育施設の審査・認定、診療ガイドラインの発行などを通して、診療水準の維持・向上と均てん化に尽力しておられる。
 国際的には、多くの学会が国際学会の招致や、国際学会における執行部での活躍、ジョイントセッションの実施などを通して貢献している。特にアジアにおいては日本が主導的な立場で国際連携を推進し、発展途上国への支援を行っている学会も多い。
 社会貢献としては、一般市民に対する疾患啓発を目的とした公開セミナーや検診制度の充実など、様々な取り組みが行われている。
 学会運営に関しては、ほぼすべての学会から、多様性を重視し、多彩な背景を持つ会員に公平な機会提供がなされる運営を心掛けているとの記載が寄せられた。加えて、多くの学会で関連の複数学会との密接な連携体制が取られていた。
 今回の報告に併せ、各分科会より日本医学会へ貴重なご意見をいただいた。日本医学会が果たすべき役割として分野横断的連携の支援などへの期待がみられた。また、国からの研究費の不足に対する懸念の表明や、国の施策として研究力強化を推進するよう国や行政への要望の発信などの希望があったことを明記し、今後の日本医学会の活動の参考としたい。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(臨床部会臨床外科系)

 臨床部会(臨床外科系)では46の加盟分科会より活動報告をいただいた。臨床部会(臨床外科系)は特定の診療領域や疾患に特化した学術団体から、比較的領域横断的に汎用性のある技術を中心とした学術団体までさまざまな形態がとられているが、いずれにおいても他の関連学術団体との緊密な連携の上で、学術活動が活発に行われている。
 とくに、各種の診療ガイドラインの策定・発信、外科領域のNational Clinical Databese、整形外科領域のJapanese Orthopaedic Association National Registry(JOANR)、救急領域の救急統合データベース事業などさまざまなデータベースの構築を学会横断的に行なって成果をあげ、社会的インフラ整備に貢献している様子が伺えた。また、いずれの学会も若手・女性医療者・研究者の支援に注力し、関連する委員会の創設も盛んに行われている。また、国際的な学術的プレゼンスの向上のみならず、将来国際舞台で活躍する人材を育成するための若手海外派遣事業への活発な取り組みが認められた。昨年の能登半島地震など大規模災害に際しての学会単位、あるいは横断的連携を駆使した支援活動も盛んに行われていた。また、少子化対策、高齢者医療の未来など多くの社会的課題への取り組みが行われている。また、チーム医療の推進、働き方改革への対応への必要性から、医師以外の医療人材の育成に関する事業への取り組みが増加している。外科系診療においても、医師の地域偏在、診療科偏在は喫緊の課題であり、それぞれの学会の取り組みが報告されているが日本医学会としてさらなる包括的な取り組みの必要性を感じている。
 臨床部会(臨床外科系)の加盟分科会の多くから寄せられたのは、労働環境の改善、ハイリスク医療を担う外科系医師へのincentiveの創設などに関する要望である。修練期間が長く、過重労働となりやすい外科系診療におけるさらなる労働環境改善や若手の要望を考慮した専門医制度の再構築も求められている課題である。本邦の医療をさらに発展させ、国際的にも大きな貢献を果たすための臨床研究の推進に向けて、国としての研究体制支援も求められている。日本医学会としても、貴重なご意見を生かして活動を続けていく所存である。