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日本医学会分科会活動報告ダイジェスト版

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日本医学会分科会活動報告のまとめ

部会

日本医学会分科会活動報告のまとめ(基礎部会)

 基礎部会では15の加盟分科会から活動報告をいただいた。基礎部会は、医学の学術的な根幹を成す基礎医学を扱う学会から成り、医歯学部における教育に携わる基幹講座およびがんや感染症などの病因・病理学、栄養学、遺伝学、神経や筋骨格系を扱う基礎医学分野を網羅している。コロナ禍で対面での学会活動が制約を受けながらも、これまで以上に活発な活動を通して、学術や社会への貢献・国際貢献を成し遂げ、COVID-19に対する情報発信においても重要な役割を果たしていることが浮き彫りになった。
 各加盟分科会とも、学部教育や大学院教育を通じた医学医療水準への貢献は言うまでもなく、学術集会の開催により研究者の学術活動と交流の場を提供し、研究活動を促進している。若手研究者の育成やダイバーシティの向上にも配慮しながら研究助成や研究者の顕彰制度を設立している学会も多かった。医学界や社会の要請に応じて、ガイドライン、用語集、倫理規定を作成したり、アウトリーチ活動を通じた一般社会への広報活動も行われている。
 学会の国際的活動については、世界的に認知された英文機関誌の刊行を有する学会が多いことは特筆すべき点であった。国際学会の開催や学術集会における研究者の相互派遣やトラベルグラント、留学支援制度による若手人材交流などが活発に行われていた。学術集会の英語化を推進するなど、海外からの演者や参加者を受け入れる体制を整えて学術集会の国際化が積極的に行われている。世界的な学術団体やアジアの研究団体における位置付けも高く、我が国の学会が世界の医学会の重要な一員となっていることが示されている。
 学会の相互交流も活発に行われており、他の分科会との連携による学術集会の開催やシンポジウム共催など、基礎部会の加盟分化会同士や関連学会との連携には申し分ないと考えられたが、学会間の情報交換と連携、特に、臨床や社会部会との連携については、日本医学会としてさらなる連携を推進するシステマチックな制度設計への要望があげられている。
 各学会とも、基礎医学を志す医師の減少に危機感を持っており、医学教育や卒後研修制度の改革、研究者の処遇改善などにより、医学部在学中・卒業後に基礎研究に従事できる体制を構築することを日本医学会として提案することが要望されている。MD研究者の養成は、日本医学会の今後の発展を大きく左右する懸案事項であり、今後の日本医学会として特に注力すべき課題と考えられる。大学における教育・研究体制の基礎となる教員や技術職員の確保に必要な予算や地位向上、学会運営に必要な法的・倫理的な共通指針の策定についても、日本医学会として配慮を求める要望があげられ、今後の日本医学会の活動の参考としたい。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(社会部会)

 社会部会では19の加盟分科会から活動報告をいただいた。法務、歴史、教育、地域から地球規模までの環境と健康、産業労働衛生、医療管理、健康危機管理、医療情報まで多岐の領域にわたり、多様性を尊重した活動を展開している。
 学術面の特徴として、データ駆動型の研究推進、政策提言に資するエビデンスの検証、評価や技術規格の開発などがある。
 社会との接点は多く、医療、公衆衛生、教育の実践と評価、規格開発、施策・制度の設計を目指す提案、提言、声明を発出している。健康危機に際し、実務と研究推進と共に制度の更新、新システムの構築に寄与している。一般向けの情報発信にも取組み、用語の知識、関連論文や実践的情報をホームページなどで紹介し、健康リテラシー向上に貢献している。
 人材育成では、多職種が参加する学会の特徴をふまえた独自の専門家認定制度を持つ学会が多い。社会部会の分野で活躍する医師のための専門医制度である社会医学系専門医・指導医の育成と認定に、8つの分科会が参加して中核的役割を果たしている。
 学会の国際的な活動では、国際組織の役員として中心的役割を果たす他、海外の研究者の投稿も多い英文誌の発行、トラベルグラント等を活用した若手の交流推進がある。
 他分科会との連携は活発である。個別の学会連携活動の他、社会部会加盟学会の若手研究者の育成とキャリア形成を目指した「若手リトリート」への参加、COVID-19のパンデミックへの対処が発端となり15学会で検討して発出した「健康危機管理と疾病予防を目指した政策提言のための情報分析と活用並びに人材支援組織の創設」の提言のとりまとめなどの実績があり、組織的な連携推進の重要性が示された。
 日本医学会への期待、要望については、分科会の協働のさらなる推進に基づく情報発信や政策提案、他の学術分野や市民との連携を通じた開かれた議論の場の有用性、産官学連携推進に伴う利益相反管理の検討、学問の自由と多様性の尊重の重要性など、ご意見をいただいた。今後の日本医学会の活動の参考としたい。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(臨床部会臨床内科系)

 臨床部会(臨床内科系)では60の加盟分科会より活動報告をいただいたが、長引くコロナ禍で様々な制約がある中、学術的にも診療面でも、社会的にも大きな貢献が明らかであった。
 学術的には、学会による疾患概念の整理・提唱、学会主導の前向き研究や診療実態調査の実施、大規模データベースの作成などが行われ、顕著な貢献が伺われた。
診療面でも、新専門医制度下における認定専門医制度の運用や、学会認定教育施設の審査・認定、診療ガイドラインの発行などを通して、診療水準の維持・向上と均てん化に尽力しておられることが伺われた。とりわけ、COVID-19感染症に対しては、多くの学会で速やかに特別対策チームが設置され、COVID-19の感染予防やCOVID-19感染症下における他疾患診療に対する提言が発出されていることは特筆すべきである。
 研究面では、多くの学会で顕著な業績があげられていることに加え、若手研究者の人材育成を目標とした報奨制度や助成金制度、海外留学のフェローシップが設けられており、継続的な研究推進に向けた取り組みが行われている。
 国際的には、多くの学会が国際学会の招致や、国際学会における理事の選出、ジョイントセッションの実施などを通して貢献している。特にアジアにおいては日本が主導的な立場で国際連携を推進し、発展途上国への支援を行っている学会も多い。ただしコロナ禍における国際連携の維持は課題でもある。
 社会貢献としては、一般市民に対する疾患啓発を目的とした公開セミナーや検診制度の充実など、様々な取り組みが行われている。
 学会運営に関しては、ほぼすべての学会から、多様性を重視し、多彩な背景を持つ会員に公平な機会提供がなされる運営を心掛けているとの記載が寄せられた。加えて、多くの学会で関連の複数学会との密接な連携体制が取られていた。
 最後に、今回の報告にあわせ、日本医学会への様々なご要望・ご意見をいただいた。日本医学会が果たすべき役割として、分科会の分野横断的連携の支援などが挙げられたことを明記し、今後の活動の参考とさせていただきたい。

日本医学会分科会活動報告のまとめ(臨床部会臨床外科系)

 臨床部会(臨床外科系)では44の加盟分科会より活動報告をいただいた。コロナ禍で様々な活動が制限される社会情勢にも関わらず、各学会より質の高い、多岐に渡る活動の報告をいただいた。
 学会の国際性に関しては英文機関誌の刊行や会員の留学支援制度の創設などによる人材交流が活発に行われている。学術集会におけるinternational sessionやトラベルグラントの設置などによる学術集会の国際化に向けての取組が積極的に行われている。
 一部の学会では若手会員数の減少が重大な課題と認識されており、その対策として若手支援のプログラムや若手の学術活動を支援する賞の設置などが行われている。今後も外科系学会における若手会員数の推移には注視が必要であろう。
 臨床的には社会的な啓発活動やデータベースの構築に基づく専門医制度の確立、さらには診療ガイドラインの発刊などによる臨床の質の担保への努力が払われていた。
 研究支援に関しては各学会においてプロジェクト研究等が行われており、それに基づく国際的なエビデンスの発出も活発に行われていた。
 他の分科会との連携では市民公開講座の共同開催や学術集会の企画や座長、演者の学会を超えた推薦制度などによる学術交流の推進、横断的な専門医制度の構築などがみられた。特に日本救急医学会では敗血症、感染症パンデミック、テロ・大規模災害に対する学術連合体を創設するなど社会の要請に対応した幅広い連携の構築がみられた。日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会は3学会が共同して、COVID-19とがん治療に関して患者さんや医療従事者へのタイムリーな情報発信を行っている。日本医学会子宮移植倫理に関する検討委員会で行われた、日本移植学会や日本産科婦人科学会の子宮移植に関する議論は日本医学会が提供しうる学会間の連携の形として今後も重要と考えられる。
 今回の報告に併せ、各分科会より日本医学会へ貴重なご意見をいただいた。日本医学会が果たすべき役割として分科会間の調整や情報の共有への期待がみられた。「働き方改革」や「臨床研究法」の下困難が予測される研究体制の維持や国からの研究費削減に対する懸念の表明や国や行政への要望の発信などの希望があったことを明記し、今後の日本医学会の活動の参考としたい。