日本医学会分科会利益相反会議

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議事要旨

第3回日本医学会分科会利益相反会議

総合討論Q&A

総合討論の質問、応答は下記のとおり。

曽根委員長:総合討論に入りたいと思います。本日は前半の部分、6人の演者の方に各立場からCOIマネージメントの意義、問題点や改善点についてコメントをいただきました。また、企業サイドからは透明性指針の説明があり、その解釈とか、今後の産学連携のあり方についてご指摘をいただきました。文科省からは里見課長が来られていますのでコメントを求めたいと思います。
 産学連携によるアカデミアの活性化は非常に重要で、医学研究が人間を対象とするところに大きな視点があります。国策としての医薬品、医療機器の開発推進、これは産と学との連携なくしてはありえないわけで、そこには倫理性を担保に、金銭関係の透明化を確保しながら、いかに連携を進めていくかがポイントだと思います。
 里見課長からもご指摘があったように、製薬企業による透明性指針が現在策定されており、来年、あるいは再来年にかけて公開された場合、各大学のスタッフあるいは学会の所属会員について、COIの申告違反、少ない額であれば問題はないと思うのですが、学会とか大学の場合、開示のための基準額を設定しており、明らかに基準額を超え、社会的にも高額のお金が支払われていた場合、その情報が企業側から公開され、ご本人から開示されなかった時にどう対応するのかが問題となりますが、文科省として対岸の火事というように考えているのでしょうか。

里見朋香文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 課長:製薬協から企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン等が出ていることについて、今は文部科学省統一方針のようなものを出すという検討はしていませんが、先ほど申し上げましたように、当然それぞれの大学において、ガイドライン等にどう対処するかということを検討していただいているということがありますので、仮に課題がかなり広がるようであれば、今後、文部科学省でも検討する余地はあるかと思っています。

曽根委員長:土岐先生から、日本医学会分科会におけるCOIマネージメントの現状調査結果について説明がありました。着実に指針策定率は55%まで増加していますが、基礎系とか、産学連携に関係ない学会もあります。そういった分科会については本当に指針が必要なのか、あるいは策定するためのスタッフとかノウハウがないという分科会もあろうかと思います。医学会としては、COI指針を策定していただきたいというのが土岐委員からの要望だったと思います。どうしても策定作業が難しいという場合、医学会としてサポートする形で共通指針的なものを作って運用していただくことも考えています。そういうご要望をいただければ、対応するということで検討させていただきます。
 それから外部委員、これは昨年度も外部委員の確保がなかなか難しい、外部委員として非常にアンチな方が入ってしまうと委員会の産学連携がうまく動かなくなりますので、外部委員の養成をどうするか。これもCOI委員会では、医学会として研修会のような形で企画し、分科会から外部委員になってほしいという方を研修会に参加して勉強していただく。そして、きちんと第三者的に、また客観的に意見をいただけるように、委員育成するのも一つの事業と考えています。これについても、事務局のほうに、そういう要請があればぜひご相談いただけたらと思います。
 それから、何度も申していますように、学術講演は医学会の各分科会の事業活動の他に、医師会や企業共催の講演会が日本全国で開催されていると思われますが、最新の診断、治療、予防に関する情報が提供され、実地臨床に非常に役立っています。招聘される講演者は学会所属の役員が圧倒的であり、医学会会員として、講演に際しては科学性、中立性を担保に最新情報を提供していくという姿勢をぜひ守っていただきたいと思います。
 それではこれから、産学連携をいかに進めるかということで議論を進めていきたいと思います。

平井委員:このシンポジウムの大きな論点というかポイントは、1つがCOIマネージメント、もう1つが透明性ガイドライン、この2つにあると思います。1点ずつ、各ポイントから議論を進めていきたいと思っています。
 まずCOIマネージメントですが、特に問題になるというか、討論が必要と思われるのが奨学寄附金の問題です。奨学寄附金は非常に日本の社会、アカデミア、産学連携のなかで大きなウエートを占めています。金額も比較的多いようです。
 しかし、他方、歴史的に指摘されているように、本当にそれでよいのか、紐付きではないかとか、さまざまな批判があるところでもあります。
 そこで、現在いろいろなところで議論を進めて、奨学寄附金をどのようにもっていったらよいか、どういうふうに将来構築したらよいのかを検討しているところがあります。宮坂先生もそういうご検討をされているところに関わっていると思うのですが、これまでの改革というか、奨学寄附金の方向性とか議論について、若干ご紹介いただけないでしょうか。

宮坂信之日本学術会議臨床医学委員会臨床研究分科会幹事:今のやり方というのは、たとえば私が奨学寄附金を受けるとすれば、私のところに当該の企業が来て、そこで話を成立させます。そして今度、受け入れるときには、私の大学は国立大学ですから、学長が受け入れて、10%前後を引いた残りがわれわれのところに来る形なわけです。いちばん問題なのは、私がその薬を全然使わなかったら奨学寄附金というのは入ってくるかというと、入ってこないわけです。
 それと、問題点は、最初のアンケート調査のときには研究費全体では民間企業と公的資金は50:50、私たちの大学ですと奨学寄附金が占めるのは30%強ですが、相当な額のものが民間から入っているということだと思います。やはりそれをいかに透明にして、社会から疑念を招かない形で受け入れるかということをやっていくしかありません。
 アメリカの場合には約5%ですけれども、それは全く仕組みが違っていて、アメリカの場合には公的な研究費、もちろん競争的資金ですけれども、はるかに多い金額が出ているわけです。日本の場合には競争的資金は確かに出ていても額が少ないのと、今はどんどん高額化していて、取れる人は取れますけれども、取れない人は全く取れない。勝ち組と負け組に分かれていってしまっている。
 それからもう1つは、臨床にいる研究者たちは、臨床業務がますます多くなってきていて(本来であれば臨床、教育、研究を等分にやらなければいけないわけですけれども)、非常に臨床の部分が多くなってきて、研究にかけられる時間が減ってくる。けれども、研究はグローバルスタンダードで出さない限り、競争的資金が取れない。そうすると、結局、委任経理金、奨学寄附金というのは、われわれにとっては非常に使い勝手が良いものだということになる。
 ですから、良い悪いは別にして、少なくとも今われわれが求められていることは、社会から疑念を招かないようにする。そのためには、隠そう隠そうとすれば社会から疑念を持たれるわけですから、いかに透明性を保つかということです。ただ、これは実際にどこまでどういう形で透明にするのかはなかなか難しくて、私自身も正直なところ、どのようにこれを解決すればよいのかよく分かりません。

平井委員:ありがとうございます。私が見聞きしているなかでは、たとえば受け入れ先をなるべく大学とか研究の部門にして、先生が受け取るという色彩を少なくするような、そういった検討もされているかに聞いています。
 会場からも少しお話を伺いたいと思うのですが、この奨学寄附金の問題につきまして、何か今後の方向性についてご意見、あるいはコメントがおありの方がいらしたら、いかがでしょうか。

日本救急医学会:奨学寄附金と少し違うかもしれません。学術助成金の開示の方法についてお尋ねします。開示するときに、「本学会の発表に関して」、あるいは「本論文に関して」というような形容詞が付きますね。これは、たとえば受託研究費で、私が脳の研究と心臓の研究をやっていて、同一の会社から、たとえば脳の研究に関しては規定を超えるお金をもらっていて、心臓の研究に関しては規定以下のお金をもらっている。それで心臓の研究の発表をするときには、「本研究に関しては」ということになると、開示すべきものはありませんということになってしまうのですが、そういうことでよろしいのでしょうかという疑問を持っています。

平井委員:詳細はやはり各学会の決めるところに任せられると思うのですが、ただガイドライン全体、日本医学会全体として言えるとすると、やはりその情報を受け取る市民または患者さんの目から見て、どのような情報が望ましいかという判断をすべきだと思うのです。
 その場合に、切り分けも可能だと思うのですが、たとえばある患者さんが、「やはりそうは言っても、研究は違っても、同じ会社からお金をいただいているぞ」とバイアスの可能性を感じ取る患者さんがおられる場合には、やはり研究の内容が違っても開示したほうが望ましいのではないかと思うのです。ただそこはマンデートという問題ではなくて、やはり望ましいという問題だと思いますし、決めるべきなのは、各学会で議論されて、その辺はそういうのが必要なのではないかと思いますが。

曽根委員長:同様な回答になりますが、先生の研究発表についてA社からの寄附金が開示されていないことについて、もし先生が、患者さんとか社会から、学会とか大学の上層部に告発されたとき、先生が説明責任を果たすことが出来れば、私はそれでよいと思うのです。「これは明確に使い方が違っていて、学会の基準でこうなっていて」ということが説明できれば問題ありません。しかし、もし高額な機械などをA社の寄附金で購入し、いろいろな研究にも使っているのであれば、むしろ私は申告したほうがよいと思います。疑わしい場合にはむしろ申告開示したほうがよい。そうすれば、一切それ以上の疑念が出てこないと思います。

日本救急医学会:ありがとうございます。私も「本発表に関しては」という形容詞は付けないほうがよいのではないかと思って、それで質問させていただきました。

曽根委員長:寄附金の件で、製薬協の方にちょっとお聞きしたいのですが、提供する側として、寄附金を今のシステムで提供していくときに、当然、販売促進と非常に関係してくると思うのです。その場合に公正な取引関係の面から問題があると思うのですが、製薬協のどなたかコメントをいただけませんでしょうか。

森田美博日本製薬工業協会プロモーションコード委員会実務委員長:製薬協の森田と申します。公正取引委員会ではなくて、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会という業界の組織が不当な景品類について管理運用をしています。奨学寄附金については、文科省のルールに基づいて販売促進とは切り離して学術研究の目的で実施しています。また、どういう研究にお使いになられたという簡単な報告はもらうようにさせていただいているように思います。

曽根委員長:先ほど宮坂先生からお話がありましたように、臨床系の教室も全国的に奨学寄附金は研究や運営資金として非常に大きいという認識をもっています。しかし、企業側は、おそらく潜在的に寄附金を減らしていきたいという動きはあると思います。われわれの立場として、日本独自の奨学寄附金制度については、この透明性をきちんと確保して社会に対して説明責任を果たせるような仕組みを作り、できるだけ発展的に継続できるようにしていくことが重要と思っています。よろしくお願いいたします。

平井委員:会場のほうから奨学寄附金関連で何かご質問なり、コメントはありますでしょうか。

日本眼科学会:日本眼科学会では、国内では日本医学会が定める前から、厚労省の規定に従って利益相反(COI)に関する基準を決めています。そして、今回、医学会のほうから、学会の役員等についてもCOIを明らかにするほうがよいということで、どのようにするかをいろいろ検討しました。結局、ICMJEのフォーマットを参考に、学会役員、編集委員長等はそれに従って学会内に報告をする、ただしこれは開示しないということで進めています。
 しかし、先ほど宮坂先生がおっしゃられたように、では委任経理金をどうするのか。日本では主任教授宛に振り込まれることが多いので、そうなると、特定の人に集中してしまうということがあります。ICMJEのフォーマットでも、個人に支払われたのか、それともinstituteに支払われたのか別々に書くことになっていますので、結局すべてディスクロージャーすることになります。したがって、どういうフォーマットを使って学会内で報告を行うのか、また、その範囲についても非常に検討して苦労したという状況であります。とりあえずこうした検討の結果、国内と国際誌の英文ジャーナルでは、どうしてもダブルスタンダードにせざるをえないということで、今のところ動いている実情です。
 したがって、報告と開示の基準がなかなか難しいと思っていますので、もしそういったことで他の学会でご意見があれば教えていただければと思います。

平井委員:よく分かりました。こういう問題というのはフェーズが3つあるのです。自己申告とか報告を受ける情報収集の段階、これは開示とも呼んだりしますが、それをなかでマネージメントしたあと外部に出すかどうか、これは公開という言葉を使いますが、この開示と公開という言葉が結構混同されやすいというか、使い方が難しいと思うのです。
 今のお話であれば、どういう範囲からデータを収集して開示を受けるかという問題。それから、それをどのように公開していくか。これはたぶん各学会でも議論は結構あるところでしょうし、日本医学会でも、どこまで踏みこんだらよいかというところはまだコンセンサスが取りきれていないところではないかと思いますが、パネリストの方々、いかがでしょうか。

宮坂信之日本学術会議臨床医学委員会臨床研究分科会幹事:今の関連で申し上げますと、私はある学会の理事長ですが、そこで利益相反、特に関係者、ある職責以上の者の利益相反について申告をしてもらおうということをしました。しかし、私立大学の方たちは受け入れが全部理事長とか学長になっていて、自分たちはもらっていない、大学がもらっている、だから自分には利益相反はない、ゼロだと申告してくるのです。
 私たち国立大学系の者は、もちろん表向きは学長が受け入れているようになっていますが、実際には私の名前で私の講座ができて、大学が管理をしています。
 ですから、そういう意味でかなり大きな、われわれ臨床医学をやっている者の間でも、利益相反一つを取っても、すごく大きなギャップがあると気が付いています。今のことにフィットするかどうかは分かりませんが。

平井委員:議論は尽きないのですが、透明性ガイドラインにディスカッションを移したいと思います。
 先ほど加来先生からのプレゼンテーションがありましたが、透明性という言葉は非常に難しいと思うのです。私は透明性という言葉の背後には、やはり説明責任があって、それがベースにこういう透明性の考え方が生まれていると思うのですが、その点、説明責任から考えて、今後のあるべき姿、あるいはどのような開示の仕方が望ましいのか。加来先生、もしよろしかったらご説明願えますでしょうか。

加来浩平川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授:今回、プロセスをいちばん問題にしました。すでに中身が決まったのだから議論の余地はないということでは問題を矮小化することになります。今、わが国がどういう透明化を目指しているのかという議論からやらないと大きな禍根を残すと思います。そういう意味で、私はこのたびの透明性ガイドラインが一人歩きして出ることに対して、危惧しています。
 内容にももちろん問題はあります。個人情報保護の問題もありますし。透明性はそういう多くの問題をはらむため、私は内包と外延を明確にという言葉を使わせてもらったのです。影響を受けるわれわれが、これをそのまま受け入れてはいけないと考えています。
 曽根先生が先ほど出されましたアンケートも企業側はだれが答えたのか。そして、大学側はだれが答えたかのかによって答が変わるかと思われます。
 われわれアカデミアが本当に切実に思って、危機に感じていることの本質は、必ずしも透明性ガイドラインに反映されているとは思っていません。ここに学会の代表で来られている多くの方はそう思っておられると思います。
 こういうことも非常に問題であって、すべての問題を包括的に議論する場を設けてから初めてこれは進まなければいけないのです。

曽根委員長:私も文科省のガイドラインを作るときからずっと関わってきているのです、弁護士さんにいつも議論にいつも入ってもらっています。新しい弁護士さんと話すと、利益相反という状態について、法曹界では回避すべきで、あってはならないというのが彼らの定義です。
 医学・医療の世界では、利益相反というのは産学連携をする限り存在する。あってはならないのではなしに、あるのだとの認識が大切です。企業との金銭的な関係(利益相反状態)は避けることが出来ないだけに、研究成果の発表はより一層、中立性、科学性が求められるわけです。利益相反状態とは、要するにグレーゾーンであり、あくまで道徳、倫理的なところの問題であって、だから、自らルールを作ってマネージメントをしましょうということで、ずっと続いてきているわけです。
 アメリカが今回、Sunshine条項を作って法律化した。アメリカがなぜそうなったかと言えば、ニューヨークタイムス等で議論がされたことがあります。それは企業が販売促進のためにどれだけ医師に高額の支払いをしているか、金銭的な関係の情報が社会に出てこないことが問題の発端でした。企業からの報告と医師からの情報では、あまりにも乖離が激しい。それから額が違うのです。われわれが日本で言っている100万円ではなく、何千万、何億という額が動いている。だから、アメリカでは法律化しないとregulationできないというのが1つの背景だと思います。

加来浩平川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授:分かりますが、それはアメリカの事情だと思います。わが国は税制管理はしっかりしています、そういうことはありえない。それぞれの国で、透明化というのはどこまでか線引きを議論してからやるべきだと申し上げているのであって、アメリカがこうだからではないと思います。わが国はわが国の事情があります。
 たとえば製薬協が、この透明性ガイドラインの概念を中国や韓国にも同様に適用できるのかということになるわけです。企業はそれぞれの国の市場性を考えて、使い分けをしているわけです。

曽根委員長:もちろんそのとおりで、透明性というのは国によって解釈も定義も違うのです。COIマネージメントも国によって違います。それからもっと言えば、学会によっても、それぞれの特殊性、専門性、あるいは企業との関わり、これは全部違いますので、ガイドラインでは皆同じにやってくださいとは言っていません。必ずそれぞれの特性を考えてやってくださいということなのです。

加来浩平川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授:曽根先生がずっと今まで関わってこられて、文科省、内科学会のガイドラインもそうでしたし、法務関係の方も入れられて、アカデミアが今、COIマネージメントできるのはここまでだということでやってこられたと思うのです。本来、われわれがやっているCOIマネージメントと、透明性ガイドラインと、これは全く違うものなのです。これは企業の自主規制なのです。
 自主規制である、だから自分たちの論理でよいのだということではないだろうということを申し上げているわけです。自主規制であっても、それによって影響を受けるものが存在するわけで、それらの意見が全く反映されていないことで、問題提起をしているのです。

平井委員:総合討論ですので、やはり会場の意見もお伺いしたいと思うのですが。
 難しい問題ですけれども、どなたかご意見とかコメントがもしあれば、よろしくお願いします。どうぞ。

日本脳神経外科学会:透明性ガイドラインでの公開を止めることができるかどうかは存じませんが、公開の方針が公表されている以上、たぶん公開されるのではないかと思います。それとは別次元の問題として、もし公開された場合にはマスコミにより興味本位に報道される可能性もあります。日本脳神経外科学会では、もし学会員がそのような心ないマスコミの餌食になったときには、間髪なく学会としてのステートメントを出せるように今年1年かけて準備しておこうと考えています。しかし、そのようなことは本来、分科会が単独で行うべきことではありません。自分たちが潔白であることを示す利益相反マネージメントのシステムを作るだけではなく、日本医学会の分科会の会員を擁護するようなステートメントづくりを行うことこそ、日本医学会の本会議がすべきことではないかと考えます。

平井委員:ありがとうございます。確かにおっしゃるとおりではないかと思います。そういう取り組みを進めていきたいと思います。

日本臨床腫瘍学会:私も全く賛成です。この透明性ガイドラインが賛成か反対かと問われても、困ったなという返事しかできないのが現状だと思っています。ただ私自身は、長い目で見ると、いずれそうなるのだろうというある種の諦感を持っています。
 しかしながら、このことが、興味本位で、あるいは非常にネガティブなキャンペーンや風評被害として、世の中に広がることを非常に懸念しています。特に非常に真剣に研究に取り組んでおられる先生方に対してこの問題が起こりやすいと思います。これをどうやって世間、社会に対してきちんと伝えるか。啓発あるいは広報活動をすることが重要であって、分科会がそれぞれ内部で行うのには限界があります。ある程度は努力してきたと思いますけれども、やはり社会に対しては、ぜひとも日本医学会を中心に行っていただきたいと思います。
 また、本日は朝日新聞様も来ておられますけれども、私も日本肺癌学会の理事長をしていた関係で、イレッサ関係ではずいぶんマスコミの方々から勉強をさせていただきました。やはり社会への影響力のかなり大きなパーツはマスコミだと思っています。したがって、マスコミのなかでも、これをどうやって社会に対して適正に伝えるかという、そういう形のある種の社内での学習会なり、あるいは一定の共通な認識を持つような動きをしていただくことを、心から望みます。

平井委員:ありがとうございます。それではそういう広報活動をぜひ進めていくように、委員長、頑張りましょう。何かコメントとか他にありませんか。

仲谷博明日本製薬工業協会専務理事:土岐先生のお話にもありましたし、今、何人かの方からのご意見もありましたが、確かに私どもも社会における理解の促進については、もっと周知をしていかなければいけないと思っていまして、新聞を使いまして、何週か連続で、この産学連携、薬を創るのにお医者さん、患者さんの協力がなければいけない、創薬に関わる各段階においてどういう仕事があるのか、またそこには先生方に仕事をお願いしているので、それに伴うしかるべき対価をお支払いさせていただいている、そのあり方については、本当にルールに則って適正に行っているのだということについて、しっかりしたご理解をいただき、興味本位のゴシップ的記事に踊らされない国民を1人でも多くつくっていきたいという思いで取り組もうとしています。来年の3月ぐらいとか、来年の7月、8月とかそういったタイミング、またタイミングは選びながら考えていきますが、一般紙を使って、何週か連続でそのような形でご理解を求めていく活動をしていこうと考えていますので、合わせてご報告させていただきます。

曽根委員長:高後先生、何かコメントはありますか。

高後委員:議論がかなりできたので。1つだけ考えてもらいたいのは、COIの具体化、グローバリゼーションということです。グローバリゼーションということと、地域ごと、即ちregionalなスタンダリゼーションとは全く別なことであると思います。アメリカの現実をみると、Sunshine法で規定され、その根拠はtax payerに対する利益を損なっていることによって出てきているという事実があります。一方、グローバルな企業も、各地域でかなり別々な動きをしていることも、世界中を回ってみれば事実ですので、それを冷静にとらえ、日本がどういう形で進めていくか示す必要があります。特に奨学寄附金制度ということがなければ、おそらく我が国では、もっと研究費へ税金を出さなければならないということになりますので、奨学寄附金については冷静に、より透明化して受け入れることを、われわれが先にやっていかなければ、国民を納得させらせないかもしれないと、今、痛切に感じました。

曽根委員長:ありがとうございます。先ほど、加来先生のお話のなかにもありましたけれども、産と学の情報交換、連携するうえでお互いに理解をする。そして、大きなターゲットはもちろん社会にいる国民や患者さんであり、そういった意味で現在取り組んでいるのは、日本医学会、日本医師会、そして全国医学部長病院長会議、そしてさらに日本製薬工業協会、4者が協議をしていく場を作るべく準備をしております。産学連携による医学研究にはいろいろな問題がもちろんありますし、それぞれの立場で改善すべき、あるいは解決すべき問題点を明確にして、やはりターゲットは社会でありますのでよりよい形で理解をしていただくべく取り組んで行きます。産学連携においてお金の授受が決して悪いわけではありません。講演の場合、知的な活動に対して正当な報酬であれば当然の支払いでありますが、そのことによって発表内容が企業サイドへとバイアスがかからないようにすることが最低限の原則です。そういうことが認識できるような、また社会的に認識されるような仕組み作りを今後していきたいと思います。
 日本医学会の先生方、各分科会のいろいろなご意見、要望を聞きながら行っていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 これでシンポジウムを終わりたいと思います。