日本医学会分科会利益相反会議

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議事要旨

日本医学会COIマネージメント研修セミナー

総合討論Q&A

総合討論の質問、応答は下記のとおり。

曽根委員長:それでは、10分ぐらいの時間を使って質疑を行いたいと思います。何かありませんでしょうか。はい。所属名とお名前をよろしくお願いします。

日本血液学会:日本血液学会の前川と申します。高後先生に確認したいのですが、自己申告の開示をして、奨学寄附金や講演料などを受け取っている方は、委員会の委員長には就くべきではないというようにおっしゃっていたように思いますが、如何でしょうか。

高後委員:例示では、1つの選択肢として委員長に就けないこともあるし、もう1つは、就任してもそれを利益相反委員会がマネージメントしていくという2つの方法があることを示しています。

日本血液学会:はい。ありがとうございます。

日本病理学会:日本病理学会の井藤と申します。まず高後先生に、27ページの専門医の取得や更新に必要な単位として制度化すべきであるというのは、かなり強い要請でしょうか。

高後委員:これは2月19日に日本医学会評議員会で決定されたものをそのまま記載いたしました、各分科会にあっては、専門医・認定医に関しての必要単位のなかには入っているべきと思います。

日本病理学会:分かりました。日本病理学会のほうで検討するように必ず報告します。藤原先生はもうお帰りになりましたか。

曽根委員長:藤原先生はお帰りになりました。

日本病理学会:お聞きしたかったことは、講習会への参加を義務化するというような表現があったと思うのですけれども、それは各施設でやればよいことなのでしょうか。

曽根委員長:施設機関の長が、臨床研究にかかわる人、事務職員も含めておりますので、対象者のすべてが講習会に参加できるようにすべきであると理解しております。

日本病理学会:分かりました。もう1つ、全職員を対象とするというのは、私は今、病院長をしているのですけれども、看護師がいちばん多いのです。病院の職員の半分以上は看護師なのです。看護師にこれに興味を持たせるというのは大変なことだろうと思いますが、いかがでしょうか。

曽根委員長:これについては、日本学術会議も、利益相反だけではなしに、臨床試験の信頼性とか質を向上させるためにはどうしたらよいかを検討する分科会がありました。その議論のなかで、医師だけではなしに薬剤師とか看護師とか、いろいろな医療職の人が参加する形で臨床試験をやるべきだとの意見がありました。被験者保護という視点からも、何かあれば、告発ではないですけれども、いろいろな意見が出せる環境を作るべきだと思います。看護師さんはパートナーとしてもぜひ研修に参加願い、啓発していただきたいと思います。

日本病理学会:ありがとうございました。よく分かりました。

日本超音波医学会:日本超音波医学会のCOI委員、石原と申します。大変勉強になりました。COIのマネージメントは日本の医学研究・医療を良くしていこうという視点がその根底だろうと思います。
 ただ、世界的に見まして日本に医学・医療というのは、もともと非常にクォリティーが高かったのですが、臨床の医学研究が沈滞化の一途をたどっています。その理由は医師が大変忙しいからというのはご承知の通りです。
 そこに今日のような、ずいぶん手間のかかるマネージメントを要求されますと、リーガルコストあるいはマネジメントコストという手間暇のコストが過剰にかかってしまいます。  日本の医学研究者において、COIをここまで厳重マネージメントしなければならない問題が本当にあるのでしょうか。
 ディオバン事件でも示されたように、あれは大学の医学研究者が悪かったというよりも、問題なのは企業の職員が身分を騙り、職を騙り、その上で行った行為です。
 つまり、無辜あるいは無垢な大学病院・医学部の研究者にこれだけ過剰なマネージメントを要求することは、リスクマネジメントとして合理的コストに見合わないと私は考えます。
 そういう意味において、今なお統一的なマネージメントの単純明解なフローチャートができていないというのは大変由々しき問題です。非常にシンプルで、普通の研究者が15分も読めば理解できて記述することができる。そういうマネージメントポリシーにしなければなりません。
 先ほどからのご講演にあるように、年に1回以上はマネージメントガイドラインの講習をちゃんと受けろとか、何々の学習をしろ、そういうことが続いていると、ただでさえ忙しい日本の医学・医療は、ことに医学研究は崩壊します。
 日本の今の医学・医療に求められているのは、もっと研究成果のアウトプットを出すべきということであります。本日のようにアウトプットを低減するようなことばかりを狼少年のように繰り返していることは大きな間違いで、10年後の日本にとって大変由々しき問題ではないかと思います。

曽根委員長:そういう意見もあるかと思います。現在、文科省とか厚労省とか、特に経産省が中心になって、日本版NIH、日本医療研究開発機構が来年度4月からスタート、それも医療法によって設置予定と聞いています。しかし、最近の大規模臨床試験にかかる不祥事が倫理性、利益相反マネージメントの拙さのためにいろいろ騒がれているし、事実、臨床試験を実施できる環境基盤が極めて脆弱なために研究の信頼性が低下しています。
 今、国際的に通じる臨床研究・臨床試験をどこでもだれでもできるという状況ではない。やはり研究の質を確保する視点からは、だれでもどこでもやれないし、また、いろいろなシステム構築とか、あるいは人的な配置を考えないと、おそらくできないだろうと思われる。そういう意味で、厚労省が文科省と一緒になって臨床研究中核拠点大学というような形で展開していますし、おそらく厳格な意味での臨床研究は、そのようなところに集約されていくのではないかと思います。そうなれば、今の研究基盤はおそらく改善されると思います。しかしそれだけでよいかどうか、研究資金源の問題もこれから大いに議論をして、行政側にきちんとわれわれサイドからメッセージを伝えていく必要があるのではないかと思います。
 それから企業側は、私も言いましたように、やはり企業というのは資本主義社会ですから利益を求めなければいけないわけで、しかしそこには当然、コンプライアンスとかガバナンスをきちんとして、被験者あるいは患者さんを視野においたCOIマネージメントをしっかりとすべきであって、そういった議論がアカデミアの場でできるようになったのは大きな進歩ではないかと思います。
 時間がもうありませけれども、ではお1人だけ、本当に簡単に的確にお願いいたします。

津谷喜一郎東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学特任教授:東京大学の津谷と申します。最後の高後先生のご報告のなかで、事例を用いた教育・研修が大事だとされました。賛成です。今日は研究倫理の教育の一環としてのCOI教育という位置づけでしたが、研究倫理の教育・研修全般においては歴史的事例を用いることも大事ではないかと思います。
 今日、2番目に話された河上先生のご報告のなかで、ナチスの人体実験からニュルンベルク綱領ができたという話がありました。日本人にとってはやや遠い話です。日本においては、そろそろ731部隊のことをきちんと教育したほうがよいと思います。
 COI教育というのは、基本的にはマニュアル的な教育です。こういうときにはこうしなさいと。一方、研究倫理の原則的なことを教育・研修するには、身近な日本の事例を用いて話したほうがよいのではないかと思います。その方が教育のインパクトが大きいためです。私は現在、東大の薬学部におりますが、薬学部と医学部の両方で臨床試験を教えています。そこでは必ず731部隊のことを教えるようにしています。学生のretention効果は高いです。
 そこで提案ですが、研究倫理を教育・研修する際には、まず731部隊のことから始めたほうがよろしいと思います。以上です。

曽根委員長:高後先生、何かコメントはありますか。

高後委員:特にありません。

曽根委員長:それでは時間がまいりましたので、平井先生からコンクルージョンをお願いします。

平井委員:平井です。本日は3時間半に近い長い時間、本当にありがとうございます。非常に素晴らしいご発表が続いていまして、インフォーマティブな本当に情報の多いセミナーになったのではないかと思います。ただ、情報がちょっと多すぎて、消化に若干時間がかかるかなという気もします。ぜひ今後発表されるホームページ上の資料をまたご覧いただいて、ぜひご理解を深めていただきたいと思います。
 私は20年ぐらいCOIの現場でやってきていますけれども、こういうルールというか、どうなっているかという問題も非常に大事なのですが、やはりCOIは現場が大事だと私は思います。COIを抱えている方に出会ったときにどのようにアドバイスをするのか、あるいはそれをどのように改善していったらよいのか。これは実はガイドラインにはなかなか書かれていないのです。個々人の経験とか人生経験とか知恵に応じる部分が結構あると思います。それぞれの組織のなかで出会う事例も違うとは思うのですが、組織のなかでよくディスカッションしていただいて、こういったガイドライン、ルールを生かした素晴らしいマネージメントを展開してもらいたいと思います。
 日本医学会としましても、来年以降もまたこれを続けるということですので、ぜひこういうセミナーの機会を提供して、そういう各組織での、各学会でのマネージメントが進むように努力してまいりたいと思っています。今後とも何とぞよろしくお願いいたします。