「平成17年度日本医学会分科会用語委員会」議事要旨
日時:2006年3月22日(水) 15:00~17:00
場所:日本医師会館 小講堂
出席:
日本医学会役員:高久会長、小泉副会長
医学用語管理委員会委員:開原委員長、杉本副委員長、大江、小野木、清水、坂井、篠塚、脊山、野添、山口(晴)、山口(直)各委員
分科会医学用語委員会委員:79学会出席
議題1「日本医学会医学用語辞典」改訂(英和 第3版)に関する今後の方針
開原委員長から、日本医学会医学用語辞典(英和辞典)の改訂、資料4(PDF 29k)、新版「日本医学会用語辞典 英和編」のイメージに基づいて、医学用語辞典(英和)改定の基本的な考え方、作業手順、各分科会への依頼事項、スケジュールについて説明があった。また、野添委員から、MeSHとUMLSについて解説があった。
議題2「厚生労働省・日本医学会監修:標準病名集」の改訂作業の進捗状況
大江委員から、標準病名マスターの経緯と日本医学会との関係について資料6(PDF 91k)、資料7(PDF 108k)に基づいて説明があった。また、昨年以来各学会から寄せられた要望についての対応について説明があった。
既に、多くの要望は、現在のマスターに反映されているが、学会間の要望に違いがある場合があることが報告され、その例が示された。
これらの違いについては、日本医学会で何らかの調整が必要である。
日本医学会医学用語辞典改訂の方針について、各分科会からのご意見(Q&A)
Q1:各学会が用語集を改訂しているが、日本医学会の用語辞典の問題点は、なかなか改訂ができないことである。用語集の刊行は情報を固定化するために必要だと思う。一方で、病名マスターやMeSH Termなどは、頻繁に改定されるので、Web上で最新版が公開されるようになっている。日本医学会の辞典もWeb上での公開についてどう考えるのか。
A1:ぜひやりたいと思う。今のところ最大の問題は費用の問題でそれを解決する必要がある。今後、少なくとも改定した部分については、Web上で参照できる形を取りたい。
Web上で公開しても本の価値はあり。辞典はCD-ROMの改定版とセットで出版するというのも一つの方法であろう。
Q2:電子版を学会のWeb上で出す際、エクセルのファイルのまま出すと簡単にダウンロードされてしまうので、著作権の問題がある。今、公のものだからパブリックにしようという話だったが、一応検討していただく方がよいと思う。
各分科会の電子版を医学用語管理委員会に提供することは、問題ないと思うが、どのようなファイルを使うかの指示があれば、これから電子版をつくるところには役に立つ。
各論になるが、眼科では、「盲」という字が使えない。今回「色盲」に関してはすべて「盲」を外して用語編成をしている。「色盲」は「色覚異常」にした。しかも、「異常」という言葉は非常に嫌われるので、たとえば「赤緑色盲」は2色型色覚ということで、「異常」も消すことにした。
眼科の領域でも「老人性」が多いが、アメリカではage related、「加齢」という言葉に置きかわりつつある。眼科では「加齢」に変更した。
A2:ぜひ、参考にさせていただいて日本医学会としてのコンセンサスを作りたい。
なお、日本医学会医学用語辞典のなかにはどの範囲までの用語を入れればいいのかという問題もある。分科会を超えて使う言葉、一般社会で多く使われる言葉を主として収載し、分科会の中だけで使われるような用語は、必ずしも載せる必要はないと考えている。
Q3:最近とくに、内視鏡外科に関する用語が多い。用語集をつくる場合に、できればコンセンサスの得られる形で、分科会に入っていない学会に対しては何かアクションをされる予定はないか。
A3:通知が遅れているが、日本内視鏡外科学会は、本年加入が認められた。内視鏡外科学会の用語集はすでに出ているとすれば、参照させていただきたい。
Q4:人名に「's」をつけるか、あるいは「氏」をつけるか、それを決めなければならない。全体として方針を決めているのかどうか、お教えいただきたい。また、歴史的に古い病名があるが、全体としては消えていくのか。また、略語の扱いは全然考慮されていないのか。
A4:今の医学用語辞典の凡例に方針は書いてあるが、凡例を少し見直さなければいけない。
今の凡例は「'sを除く」が標準になっている。「氏」という字も、日本語では「ない」を標準として今の辞書は作られている。UMLS、MeSHと比べてみたが、英語圏では、「's」があるのがむしろ普通のようである。少なくともMeSHの標準語のなかでは全部「's」がついている。実際にMEDLINEの医学文献のなかでの使用例を調べてみると、「's」がついている方が圧倒的に多い。
従って、次の版では凡例を変更し、少なくとも英語については「's」をつけるようにしたい。いずれにしても7月までには凡例をきちんと固めてお示ししたい。
古い用語は、推奨語ではないということを明確にしてつけておく。
略語については、積極的に略語を採用するのではなくて、たとえばエイズのようにその略語が1つの医学用語になっているものについては採用したい。略語集のようにする必要はないと考えている。
Q5:われわれの学会では、用語集を作り直すのは手間がかかるので補遺という形で出した。分子生物関係の臨床的なものをどうしてもバージョンアップしなければならない。日本医学会分科会には臨床的な分子生物関係の学会が加盟していない。
7月に分科会宛に送付いただく改定版第1次案というのは、電子媒体という形になるのか。
A5:多分、電子媒体でお送りするであろう。
分子生物学会はドクター以外の方が多い。生化学会、生理学会あるいは薬理学会、基礎の学会のほうでかなりカバーできるのではないかと考える。
日本医学会分科会の外に貴重な用語集があれば、情報源として排除するものでは決してないので、ぜひお教えいただきたい。
標準病名集については、いろんな意味で影響が大きい。学会と違った標準病名があって影響を与えてもいけないと思う。何かご意見ご不満などあればご発言いただきたい。
Q6:「副甲状腺」と「上皮小体」について、日本外科学会では「副甲状腺」を採用している。甲状腺外科研究会だと思うが、上皮小体を使いたいという書簡をいただいた。副甲状腺は広く使われているが、担当学会で決めたことに従うのがいいのではないかと思う。
A6:いろいろな方々のご意見を伺った上で決めたい。
「副甲状腺」と「上皮小体」のことは、日本語の推奨語の決定の手順のなかで、とくに、「日本医学会も監修している「標準病名集」との整合性を図る」、「医学会以外の用語関連の活動(例えば行政、医師国家試験、ICDなど)との整合性を図る」、「NPO「医学中央雑誌刊行会」が編纂している医学用語シソーラスとの間の整合性を図る」と明記されている事柄が重要と考えている。
これに加えて、UMLSとMeSHでどのような言葉が使われ、それが日本語の訳として一番ふさわしいかということが基準になると思う。各学会のご意見も当然聞かなければならないが、おそらく推奨語は1つにして、これと違う言葉についてはつけ加えるという形にしたいと考える。
Q7:用語の質問をしたいときの窓口を教えていただきたい。たとえば、標準病名作業委員会に学会としての意見を直接申し出た方がいいのか、それとも、日本医学会医学用語管理委員会がいいのか。
A7:医学用語辞典につては、直接、日本医学会医学用語管理委員会
()へご意見をお寄せいただきたい。
病名については、www2.medis.or.jp/stdcd/byoumei/index.htmlに直接要望を書き込めるページがあるので、それを利用するのが便利である。また、病名作業班から学会の意見をお聞きしたいこともあるので、各学会に窓口にあたる担当者をお願いしてある。その担当者を経由していただいても結構である。
なお、標準病名マスターのリリースは、医療情報システム開発センターという財団で行っている。に入力していただければ、改訂作業の委員会に通じる。
Q8:分子生物学会は、分子生物の分野で大事な研究をいろいろしている。ぜひ分子生物学会も用語集の編集のためにも入っていただければいいのではないかと思う。
A8:分子生物学会に用語集があるか否かは分からないが、大変大事なご意見として、ぜひ検討させていただきたい。