日本医学会分科会用語委員会議事要旨

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「平成18年度日本医学会分科会用語委員会」議事要旨
日時:2006年7月24日(月) 15:00~17:00
場所:日本医師会館 小講堂
出席:
日本医学会:高久会長,出月副会長
医学用語管理委員会委員:開原委員長,杉本副委員長,小野木,坂井,篠原,脊山,野添各委員(日本医学会医学用語管理委員会委員名簿)
医学用語委員:76学会出席(資料3(PDF 112k)

日本医学会長挨拶
 高久会長から今回の改訂の趣旨は,医学用語の国際性と各学会の関連用語との整合性を図ることにある.2007年4月開催の日本医学会総会までに完成させたいので,協力を願いたいと挨拶があった.

日本医学会医学用語管理委員会委員長挨拶
  開原委員長から,2006年3月22日開催の平成17年度日本医学会分科会用語委員会において,改訂の基本方針を説明したが,それに続いて,本日は各分科会で作業をしていただくために,校正の仕方を具体的に説明した上で,ご協力を依頼したいと挨拶があった.

「日本医学会医学用語辞典」改訂(英和 第3版)のための専門語の追加・削除・訂正に関する作業について
 2006年3月22日開催の平成17年度日本医学会分科会医学用語委員会において,説明したように,現在,日本医学会医学用語管理委員会は,医学用語辞典(英和 第3版)の改訂を進めている.

 今回の改訂では,次の目標で改訂を行うこととした.

  1. 採用する英語は現在英語圏で使われている英語をできるだけ採用すること.
  2. 対応する日本語はできるだけ1語とし,複数語ある時は,日本医学会として使うべき日本語を推奨語として示すこと.

 ついては,現在の「日本医学会医学用語辞典 英和 第2版」に収載されている各分科会に関連すると思われる医学用語を抽出したデータをご覧の上,資料1の要領に従って専門的な立場からの校正をお願いしたい.提出締め切り日を2006年8月末日とする.

送付先:〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16 日本医師会館内
   日本医学会医学用語管理委員会 宛
   電子メール:

資料1「日本医学会医学用語辞典」改訂(英和 第3版)のための追加・削除・修正の手引き

○ 用語修正の作業は,下記の二つのファイルを許に行う.

(1)各学会番号と学会名のついたファイル
(2)「未振り分け語」ファイル

ファイルの説明
 学会名ファイルは,現在の医学用語辞典(英和 第2版)に含まれている各学会に関係あると思われる用語を可能な限り選別して抽出した.しかし,学会別に用語を選別することは必ずしも簡単ではないので,関係ない用語が多く含まれている.また,未振り分けファイルは,学会に振り分けられなかったファイルである.
 現在の医学用語辞典は,長い歴史を経ているので,古い用語が含まれていたり,新しい用語が欠落していたりする可能性がある.このため,今回の改訂では,次の方針をとることとした.

  1. 英語の見出し語は,できる限り現在英語圏で使われている語とすること.このため,米国国立医学図書館が編纂している,Medical Subject Headings (MeSH) 及び,Unified Medical Language System (UMLS) に収載されている英語を優先的に採用することとした.
    MeSH 及び UMLS については,前回の会議の資料(3-付録)(PDF 130k)を参照.
  2. 日本語は,できるだけ1語のみとすること.複数語ある場合には,その中の1語を「推奨語」という印をつけて使用すべき優先順位を示すこと.使用すべきでない用語は「廃語」という印をつけること.
  3. 分科会の用語委員会と密接な連携をとり,分科会の用語集との間の整合性をとること.

ファイルの内容の見方

1 学会名ファイル

項目名 説明
英語 チェックしていただきたい英語見出し語です
MeSH 「M」という記号のついているものは,MeSHで採択されている語であることを示します.
UMLS UMLSに採択されている語であることを示します.番号が同じものは同義語であることを示しています.
日本語 チェックしていただきたい日本語です
修正追加記号 削除の判断は,英語について行ってください.その英語を削除する時は「D」を入れてください.英語・日本語共に削除されます.
日本語を修正した時(廃語を含む)は「M」を入れてください.
その用語がご自分の学会と関係ない時は,「N」と入れてください
同義語がある時は,「S」と入れて,備考欄に対になる同義語の連番を入れてください.
新しい語を追加する時は,「A」と書いて備考欄に追加する語を入れてください.追加語が多くある時は,別に追加する語の表を作ってください.
修正英語 英語欄と同じものがコピーしてあります.削除を検討するのみで,原則として修正しないでください.どうしても修正する必要があると考えられる時は備考欄に修正語を記し,その理由を書いてください.
修正日本語 日本語欄と同じものがコピーされています.ここに書かれている日本語を直接修正してください.
1)訳語が複数ある時は,一つにできないか検討してください.
2)複数必要な時は優先する順番に並べてください.この際,漢字を使う場合,ひらかなを使う場合は,別な語として優先順位をつけてください.
2)前後の語を見て,同義語なのに日本語訳が異なっていないかチェックしてください.もし異なっていればそろえてください.
備考 次のことに使ってください.
同義語を記す.
英語の修正語を記す.
追加語を記す.
その他必要なこと.
キーワード MeSHで分類できなかった語をグループとしてまとめるためのキーワードです.
MeSH Tree No MeSH採択語はそのシソーラスの位置を示しています.
連番 並べる順序を示す番号です.
学会名 学会名を示しているのみで,通常は必要ありません.

全一覧表はこちらをご覧ください(PDF 174k)

2 未振り分け語ファイル

未振り分け語ファイルの項目
項目名 説明
連番 連続している番号で特に意味はありません
英語 チェックしていただきたい英語見出し語です
MeSH ほとんどすべてのMeSH採択語は既に抽出されているのでここにMの記号の入っているものは例外的なものです.無視して結構です.
UMLS UMLSに採択されている語であることを示します.
日本語 チェックしていただきたい日本語です

具体的なチェック方法

1 削除してもいいと思われる英語に対し,「修正追加記号」欄に「D」(削除)と記してください.この際,「MeSH」欄と「UMLS」欄を参考にしてください.ここに番号が入っている語は,英語圏でよく使われている語です.MeSHにもUMLSにも番号のない語は,英語圏ではあまり使われない語である可能性があります.もし,MeSH採択語に同義語があれば,削除の対象として考慮してください.

2 例えば,表1(PDF 227k)では,eyelid, palbebra, blepharonという三つの語が並んでいる所があります.eyelid はMeSH採択語で,palbebra はMeSH採択語ではありませんが,UMLSにはある語です.blepharonは,MeSH番号もUMLS番号もありません.これは英語として間違いではないですが,英語圏ではあまり使われない用語だと思われます.従って,この語は他に二つも同義語があるわけですから,削除してもいいと思われます.この際は,blepharonの修正追加記号欄に「D」を記してください..

3 表1(PDF 227k)の最初にある5つの語は,眼科と関係ない語ですが,「盲」というキーワードで抽出したために一緒に抽出されてしまった語です.このような語に対しては,関係ないという意味で「N」を記してください.

 なお,これらの語は,外科学会,産婦人科学会に振り分けられていますので,そちらでチェックしていただきます.

4 日本語の訳語が二つ以上ある場合は,できるだけ一つにし,どうしても一つにできない場合には,採択すべき順序を付けてください.

 先ほどと同じ上の例では,eyelid には「眼瞼」と「まぶた」という二つの日本語があります.もし,「眼瞼」一つにしてよいのであれば,「まぶた」を削除してください.また,「まぶた」を残すのであれば,次のpalpebra が同義語であるのに,日本語が異なっているのはおかしいので,こちらにも「まぶた」をくわえてください.この際,眼瞼を先に書けば,眼瞼が医学会としての推奨語ということになります.

5 英語見出語や日本語訳語の中に,同義語があれば,どれとどれが同義であるかを備考欄に示してください.この際,同義語は,表の最後から2番目の欄にある連番で示してください.同義語は現在,隣り合わせに配列されていますが,辞書になった時は,アルファベット順になるので,別々に収載されます.従って,その二つが同義語であることを示すことが重要なのです.

6 このリストにはない用語で重要と思われる用語があれば,修正追加記号欄に「A」(追加)と書いて,備考欄にその用語を記してください.追加語が多くある時は別表にして提出してください.その際,必ず,英語と日本語を対にして書いてください.

7 特に,使うことが望ましくない用語があれば,「廃語」と記してください.
  例えば,下記は日本ハンセン病学会にお願いすべき例ですが,現在の辞典には,下記のような「らい」または「癩」という言葉が収載されています.これらの言葉の採否を整理すると共に,英語は,収載しておくが,この日本語は使うべきでないと判断される場合には,これまでの修正と同様に,修正追加記号欄に「M」と書いて,今後使うべき新しい日本語を「修正日本語」欄に付加してください.この際,使うべきでない語は削除するか,または,使うべきでないことを強調したい時は,敢えてその日本語を残し,下の例のように語の後ろに(廃語)と記してください.

例:らい病 ⇒ ハンセン病,らい病(廃語)

現在の辞書に収載されている「らい(癩)」のついた語
lepromatous leprosy C0023348 らい腫らい;らい腫癩;癩腫らい;癩腫癩
lepromatous uveitis     らい腫性ぶどう膜炎;癩腫性ぶどう膜炎
leprosy cell     らい細胞;癩細胞
lepra cell     らい細胞;癩細胞
leprosy control     らい抑制策;らい抑制;癩抑制策;癩抑制
leprosy control program     らい抑制策;らい抑制;癩抑制策;癩抑制
leprosy drug     治らい薬;治癩薬
Leprosy Prevention Law     らい予防法;癩予防法
Leprosy Prevention Act     らい予防法;癩予防法
leprous neuritis     らい性神経炎;癩性神経炎
leprous ulcer     らい性潰瘍;癩性潰瘍
macular leprosy C0242551 斑紋らい;斑紋癩
maculoanesthetic leprosy     斑紋麻痺らい;斑紋麻痺癩
mixed leprosy     混合らい;混合癩
murine leprosy   C0275673 ねずみらい;鼡癩;そらい
mutilating leprosy     切断らい;切断癩
Mycobacterium leprae C0026922 らい菌;癩菌
Mycobacterium leprae antigen     らい菌抗原;癩菌抗原
mycobacterium lepraemurium C0026923 鼡らい菌;鼡癩菌
neural lepra     神経らい;神経癩
nodular leprosy C0086546 結節らい;結節癩
tubercular leprosy     結節らい;結節癩
pannus leprosum     らい性パンヌス;癩性パンヌス
rat leprosy     ねずみらい;鼡癩
tuberculoid leprosy C0023351 類結核らい;類結核癩

 以上の修正・削除・追加などの記号をまとめると次のようになります.

修正・削除・追加などの記号
記号 意味 記号の由来
削除 Delete
修正 Modify
同義語 Synonym
追加 Add
学会と関係ない語 Not related
廃語 使うべきでない語

平成18年度日本医学会分科会用語委員会における各学会からのご意見(Q&A)

Q1:今回の改訂作業の用語は,学会毎の分担になっているが,これは学会毎の用語集の編纂なのか.
A1:日本医学会の用語集は,学会別に編纂されていない.従前から1冊である.

Q2:気管食道科は,耳鼻咽喉科系と内科・外科気道系と麻酔と放射線との混合である.気管食道科学会では,相互に必要な用語を用語集に盛り込んであるが,今回のキーワードは気管と食道科のみで,咽喉系,胸部疾患が抜けている.これをどのように考えれば良いのか.
A2:できる限り,その学会が使用しているであろうキーワードを抽出したが,足りないと思われるキーワードは教示いただけば追加したファイルを改めて送る.

Q3:日本医学会医学用語集の全体のデータをいただくことは,可能か.全体を見ながら整合性を取りたい.
A3:全体のデータは,お渡しできる.8万語収載されている.

Q4:認知症の取り扱いは,精神神経学会のみならず神経学会でも大きな問題である.相談の余地を残しておいてほしい.
A4:認知症については,関連の2学会に見ていただくようにデータを配分している.

Q5:放射線の用語に「何々グラフィー」または「何々グラフィ」と,音引きがあるのとないのと2通りあるが,どちらかに決めてほしい.
A5:音引きの有無などの共通する問題は,本委員会で先に決めておいた方が良かったかと思う.音引きについては,医学放射線学会と相談して決めたい.

Q6:リハビリの用語集を改訂している.日本医学会用語集の凡例を参考にしたいが,その後,凡例の作成は如何か.
A6:第2版の凡例をほとんど踏襲するが,一部変更がある.変更点は,人名のついた病名に,’Sを付ける.また,漢字の略語体はワープロにあるものを使用するように変更する予定である.

Q7:日本消化器内視鏡学会への割り当てのキーワードは,食道・胃・腸・潰瘍・がん・腫瘍・新生物となっているが,機械,器具の面,術式の面がない.内視鏡外科学会には,腹腔鏡,内視鏡がある.消化器内視鏡学会ではこれらの用語を見なくて良いと理解して良いのか.
A7:他学会と関連している用語は,広く見て貰いたいので,その旨,お申し出いただきたい.

Q8:日本消化器内視鏡学会は,関連の分野である消化器病学会,解剖学会,超音波医学会とオーバーラップしているので,関連分野の用語も見たいと思う.
A8:用語の抽出方法は,キーワードとMeSHの2通りしかないので,どの方法でほしいか,または全体のファイルがほしいかをお知らせいただきたい.

Q9:内視鏡外科学会は,endoscopyで引いても,術式が限られたものだけがリストアップされている.術式を網羅する形で,Aマーク(追加マーク)を付けて修正したほうが良いか.
A9:Aの印を付けて,別表で作成していただけると有り難い.

Q10:内視鏡外科学会は,消化器内視鏡と用語が重複すると思うが,取りあえず別々に提出する.あとで,整合性を取るようにしたい.
A10:各学会の整合性をとるのは,本委員会の役目と思っている.なお,日本医学会の用語の守備範囲は,全ての学会の用語を網羅しなければならないとは思っていない.極々専門的な用語は,各学会の用語辞典で取り扱っていただきたい.

Q11:腎臓学会でありながらキーワードは,「膀胱,尿管,副腎,腎,前立腺,精巣,副睾丸」というような泌尿器科の全てが入っている.これはかなり関係ないと思う.Nの記号を付して削除して良いか.
A11:結構です.Nは削除ではなく,他の学会で見ていただいていると理解していただければ良い.

Q12:各学会で用語集を発行している.日本呼吸器学会も4月に刊行し,その電子媒体は日本医学会に提供できる.また,学会毎に訳語の相違があるので,全学会のデータを提供いただいて,調整する必要があろうし,この方法を取ると作業の手間も省けると思う.このようなことをするつもりはあるのか.
A12:各学会の電子媒体をお送りいただければ有り難い.冊子体では提供いただいているが,冊子体で整合性をとることは,人手の制約もあり,実現は難しい.是非,電子媒体での提供をお願いしたい.

Q13:未振り分け語のファイルの使い方であるが,寄生虫学会では,当学会の関連語を親ファイルに移して良いか.
A13:是非そのようにお願いする.

Q14:各学会の守備範囲のキーワード以外は,割り切って,他学会でやっていると考えて良いのか.なおその際には,ある用語について,どの学会もチェックできなかったということも起こりうるのではなかろうか.
A14:一般論としてはなかなか答えられない.具体的な例を示していただいた方がよい.8万語の全ファイルでマッチングしていただいてもよい.

Q15:このたびリウマチ学会は,電子ファイルが完成し,日本医学会との整合性の後にネット掲載する予定である.リウマチ学会のファイルを,日本医学会に提供するので,日本医学会の未振り分け用語の中からリウマチ学会の用語を選択してお送りいただきたい.また,日本医学会が将来的にインターネットに用語をサイトするようになれば,リンクを張って検索し,その整合性をとる作業が行われるように希望する.
A15:リウマチ学会の電子ファイルをいただければ,未振り分け用語の中からリウマチ学会
の用語を選択して作業をお願いすることは,やぶさかでない.また,日本医学会医学
用語辞典が,ネット上で用語検索できるようになれれば,いずれネット上で各学会と
議論できるようにもしたいと考えている.

Q16:脳神経外科学会に割り振られた用語は,600語位である.最近改訂した脳神経外学会用語集をチェックすると,他の学会に割り振られた用語が気になる.例えば,神経学会・整形外科学会・脳卒中学会のファイルがあった方がよい.
A16:了解した.この対策は,全ファイルをお渡しするのがよいと思うが,とりあえず足りないキーワードを提出いただいて,再調整したい.なお8万語の全ファイルはいつでもお渡しする.

Q17:キーワードは,どのようにして抽出したのか.
A17:必ずしも系統的ではなく,適切なキーワードでの用語選択ができていない場合もあろうかと思うので,その際には,連絡をいただきたい.また,差し上げたファイルの意味は,配列にある.ABC順ではないが,とくに類似用語を一カ所に固めて配列してある.比較的,作業がしやすいように考慮した.

日本医学会医学用語辞典の全体ファイルについて

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