日本医学雑誌編集者会議 Japanese Association of Medical Journal Editors

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議事要旨

第5回日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)総会・第5回シンポジウム:シンポジウム

総合討論Q&A

総合討論の質問、応答は下記のとおり

北村委員長:ご質問とかご意見とかありますでしょうか。

日本保険医学会:総会で医学用語辞典の話が出ましたが、本日のテーマにありますオープンアクセスという意味では、現在、IDとパスワードを入れないと医学用語辞典が使えないようになっているわけですけれども、今後、パブリックアクセスについてのお考えはいかがでしょうか。

脊山医学用語管理委員会委員長:冊子体としては5年前に出た「日本医学会医学用語辞典 英和」第3版が最後なのです。今のご指摘は大変重要なことなのですが、出版社との関係があり、まだ一般公開の段階には至っていません。ただ、分科会を通じて、医学用語辞典に記載されている用語を参考にしてほしいということがあり、分科会宛にパスワードをお配りし、冊子体もお配りしました。ただそれが各分科会で有効に使われているかどうかとなりますと、いろいろ問題がありますが、現状としては各分科会宛にパスワードを発行して、それを分科会で運用していただいております。
 将来的には一般公開という方向を考えていますけれども、印刷版権の問題がありまして、まだ解決していません。

北村委員長:投稿規定で、学会員でなくても投稿できるという学会が増えてきまして、そうすると、学会員でない人が用語辞典を見られないと用語に準じた論文を書けないことも起こりえますし、また、最近、電子辞書に医学辞書が入っているものがあるのですが、違う会社のものを使っているために医学会の用語辞典を使えないということもあり、できればすべて無料で電子辞書などにも載せていただけたらと思います。

脊山医学用語管理委員会委員長:おっしゃるとおりだと思います。日本生化学会の『生化学』では、投稿規程に医学用語辞典を参照するという文言を盛り込んでありますけれども、編集者の段階でそれを当てはめていただくことを十数年前から行っています。分科会それぞれの取り組みだと思いますが、会員であっても、あるいは会員でない人から投稿されたものだと用語が違う場合がありますが、そういう場合に、編集者の権限とか立場で、この言葉に代えてよいかどうかという対応をしていただけるとありがたいと思っています。

日本眼科学会:今年から運用しています国試の出題基準で私は委員長を担当したのですが、その際に、用語は日本医学会の用語集に準じるということにしております。やはり大学の学生がアクセスできるほうが良いと思いますので、分科会以外にも、大学にも開かれている方策をお願いしたいと思います。

北村委員長:ありがとうございます。まさにそのとおりだと思います。

吉岡委員:「日本医学会 医学雑誌編集のガイドライン(案)」について、ご質問、あるいはご意見をいただければと思います。

日本脳神経外科学会:重複投稿の話ですけれども、このガイドライン(案)のなかで、扱いが最後のところで多重出版と二次出版と項目別になっていまして、和英、両方の言語による多重投稿がどちらに当たるのかというのはこれではちょっと分かりにくいので、そういう項目をぜひ、新しいガイドラインでは必ず付け加えていただきたいと思います。

吉岡委員:あとはよろしいですか。どうぞ。

日本感染症学会:ガイドライン(案)の8ページのなかごろに、「著者が適切な査読者を指定できるように配慮することが必要である」という一文があるのですが、今のところわれわれはこういうことをやっていないのですけれども、今後、全体的にそういう方向になるのでしょうか。

北村委員長:多くの雑誌では1名ぐらい査読者を指定できるようになっていますし、著者の満足度を考えるとそういうシステムがあってよいと思います。
 それから、多く出てきた査読者が少ないというのは、特に東南アジアの諸国においても深刻で、実はまだオフィシャルではないのですが、日本の対応する学会を紹介していただいて、日本の学会員に東南アジアの雑誌の査読をお願いできないかというようなことまでむしろ言われていて、世界中で査読者が少ないという状況にあるように思います。
 逆に、日本でも少ないと書いてあるので、困ったものだと思うのですが、できれば広い視野に立って査読者を相互共有できるような仕組みを作っていけたらと思っています。

日本麻酔科学会:少し細かい話で申し訳ないのですが、1-3の「編集の自由」というところで、これは雑誌だけではなくてホームページ上のことも含まれると考えてよろしいでしょうか。たとえばホームページ上に編集長としての声明文を載せるとか、そういった類のことも含むという判断でよいでしょうか。

北村委員長:含むと思います。いちばん編集者の自由が侵されるのは、出版社です。出版社、特に多くの英文誌は、海外の大きな出版社、例えばElsevierだとかSpringerと契約していらっしゃると思うのですが、そうすると編集者の意に反して売れる本を、売れる雑誌を作ってほしいということになります。ですから、トピックに則った論文はacceptされやすく、トピックでないものは編集者の意に反してわりと載せてもらえないというようなconflictが起こりえます。すべてにおいて編集長は編集に責任を持つと同時に、自由な編集ができるということを確保していただきたいと思います。
 ホームページもそうであろうと思います。もちろん出版社と編集者が、方向性なり利害が一致した場合は問題なく行けると思うのですが、利害がずれた場合は、編集の自由はぜひ確保していただきたいと思っています。

日本麻酔科学会:出版社もそうなのですが、先ほどのアンケートのなかにもありましたように、公益法人、社団法人になると学会の影響が非常に強くなりまして、たとえば皆さんご存じの藤井医師問題のときも、発覚後、翌々日には声明文を作って出そうとしましたが、学会からストップがかかり、学術委員会、理事会、倫理委員会の審査を経なければホームページに載せてはいけないといったことがありました。その時、理事長に直談判して、2週間後に何とか載せることはできたのですけれども、そういった意味で、編集だけでなくて、ホームページ上の編集長としての声明文も自由に出すべきではないかと思っています。

吉岡委員:大変ありがとうございました。重要なご指摘だったのではないかと思います。ガイドライン(案)が最終的なバージョンになるのはいつでしたか。

北村委員長:案のまま置いておくのも心苦しいので、平成25年の8月3日の日本医学雑誌編集者会議総会でお認めいただきたいと、気持ちの上では思っています。
 資料12の原案を、メールや郵便等で、分科会の先生方のご意見をできるだけ取り入れ、海外の案も取り入れて修正し、ご提示していきますので、積極的にご意見をいただければと思っています。よろしくご協力をお願いいたします。

根岸委員:講演ではいかにもOA誌が普及しているような印象になったかと思いますが、実際はそうではなくて、名前の知れている有力な雑誌のほとんどはOA誌ではありません。したがって、現状でオープンアクセスというと、その大部分はPubMed Centralとか、各大学の機関リポジトリといったところに論文単位で著者がアップロードするという意味でのオープンアクセス、つまりグリーンOAの方で、雑誌自身がOAというゴールドOAは、有力誌ではあまり進展していないようです。つまり、それらは強気で、図書館等からお金がまだ取れるのでOA化していないということです。

北村委員長:では、本日お集まりの先生方の雑誌で、一般人がただで見られるという意味で、それはいつからでもよいです、出版後半年後からでもよいですが、学会員でない人が無料で見られるという意味のOA化、オープンアクセス化をされている雑誌の先生、挙手を願えますか。見た感じで半分ぐらいです。
 そのなかで、出版のいちばんカレントなものもOAで見られるという雑誌は手を挙げていただけますか。半分の半分ぐらいだと思います。
 その次に、DOI番号は先生方の雑誌の論文に付いていますか。DOIが付いている雑誌は手を挙げていただけますか。見た感じで半分より少し少ない感じです。
 大体これが日本の状況です。オープンアクセス化している雑誌で、手を挙げていただいた方が36名、カレントのものも見られるが12名、それからDOI番号が付いているが20名ということでした。数え間違いもあると思いますが、大体そんなところかと思います。

日本小児科学会:少し悪質というか、CrossCheckの事例に当てはまらない例が最近あったのでお話しいたします。外国からの論文で、私たちが査読を始めたときに、やはり国内の違う英文誌に同じような論文が行ったということが起きました。実は5日違いで2つの雑誌に、まだ出ていない論文を送っていて、全く同じなのですが、何で分かったかというと査読者が同じだったのです。どのぐらいの罰則にするか前例がないので分からなかったということですが、引っ掛ける方法はないと思います。

北村委員長:そうですね。いわゆる典型的な二重投稿で、時間の節約のようなのでそういうことをされる人もいます。それはCrossCheckでは引っ掛かりません。

日本神経学会:日本神経学会の雑誌は和文誌なのですけれども、海外の人から重複投稿ではないかというご指摘がありました。しかし、それは総説なのです。総説の場合、CrossCheckをすると、当然自分の他の文章と似たようなものが出てくると思うのですが、どのように考えたらよいかをお訊きしたいのですが。

北村委員長:お二人、いかがですか。

榎本 裕日本泌尿器科学会編集委員会編集主幹:確かに総説はよく当たります。ある程度業績のある方が引っかかりますので、ご自身の論文に当たるのですが、基本的には総説の場合には、内容を見て、大概はOKになります。総説という論文の性質上、そうせざるをえないというのが私の持っている印象です。

磯 博康日本疫学会JE編集委員長・理事:日本疫学会の場合は、中身が完全に一致した場合は、できるだけクォーテーションマークでその部分を囲んで引用して欲しいと言っています。もしクォーテーションマークがない場合は、少しパラフレーズなり、著者自身の表現の仕方で、できるだけオリジナルの意味合いを損ねない範囲で修正して欲しいという方針を出しています。
 対応はジャーナルによっても違いますし、剽窃に対して厳しい対応をしている雑誌では、クォーテーションマークで囲んで、引用文献を示すように要求する場合があります。

北村委員長:お伺いしますが、CrossCheckを使っていらっしゃる学会の先生は挙手を願えますか。ずいぶん増えましたね。13雑誌だそうです。費用もそれほど高くはないので、使う価値はあるかと思います。ただこれはいわゆるコピー&ペーストをチェックするのであって、最近話題になった、完全にはじめからないものを捏造したり、不正に変えたりするというのは全く引っ掛かってきませんので、それはまた別の問題になります。

榎本 裕日本泌尿器科学会編集委員会編集主幹:CrossCheckシステムは非常に良いのですが、それしかないわけではありません。最近、インドの泌尿器科学会の雑誌の編集者の方と話す機会があったのですが、CrossCheckは使っていなくて、ほとんどはGoogle Scalarでやっていると言っていました。
 ただ、そういった方法を使う場合、どうしても特定のフレーズや文章だけを入力して、それに似たものがないかどうかをチェックすることになるのですが、どのへんを選んだらよいのかはコツがあると言っていました。もしもまだどこも使っていらっしゃらない方がいたら、Googleなどでfree plagiarism checkerを入力すればいくらでも出てきます。フレーズというか、ワード数の少ない文章を入れるのなら無料で、ドキュメントをそのまま放り込むのは有料というcheckerもたくさんあります。どれぐらい有効率が違うか私も試したことはないのですが、試しに怪しいかなと思う論文などは試されてみてもよいのかもしれません。

北村委員長:日本語の論文に関してはまだ有効なものはありません。査読者の記憶に頼っているような状況ではありますが、この分野は刻々進歩するものだと思います。

宮川謹至独立行政法人科学技術振興機構調査役:日本語の論文はどうするかという話がありました。先ほどジャパンリンクセンターのご紹介をしましたが、実はCrossCheckにかけてJaLC Check(仮称)といったようなものを作ろうかという案がありまして、iThenticateとも相談をしているところです。もしご要望が強ければ、そういった方向で開発していきたいと思っています。

北村委員長:まだないのですが、近々できそうかということです。

吉岡委員:編集を担当されている先生も悩みがさらに増したところもあるかと思いますが、これが現状ということで、やはり各雑誌は今後いろいろ考えていかなくてはいけないと思います。もし可能であれば、日本麻酔科学会誌のほうから何かお話があればお願いします。

日本麻酔科学会:このたびは藤井氏の問題で、日本の医学研究者の信頼性を非常に揺るがしてしまいまして、学会を代表しまして、まずお詫び申し上げます。
 学会としては、すぐに調査委員会を立ち上げまして、各施設に入って調査をし、日本麻酔学会のホームページに掲載した通りの結果であります。それがRetraction Watchに出されているわけです。編集部としては、今後どうするかということで、実は臨床研究の事前登録は平成26年から義務化をする予定だったのですが、こういったことがありましたので、1年前倒しして、平成25年4月から完全な義務化とする予定です。それから、coauthorの方々が知らない間に藤井氏の論文に勝手に名前が使われていたという事実がありましたので、coauthor全員の署名を求めるということとし、既に行っています。
 それから藤井氏の処分に関しては、藤井氏はすでに退会してしまいまして、公益法人としては退会を認めないことができないという弁護士さんのお話で、再入会できない形を取りまして、実際には永久追放という形になる予定です。
 その他、除名処分の方から譴責まで、coauthorに入った方々は皆、何かしらの懲戒を受けるということになりました。実際30誌以上のジャーナルで200編以上の論文が対象になって調査がなされています。
 既に、日本麻酔科学会の調査は終わったのですが、Editor-in-Chiefの連名で決めたこととして、各施設がきちんと調査結果を出すまでは原則retractionはしないという取り決めをしていますので、各施設から実際の調査報告が上がった時点で、1編ずつretractionしていくことになると思います。

吉岡委員:どうもありがとうございました。これはどこの学会ということではなくて、全分科会に今後共通することにもなり、大変参考になったのではないかと思います。
 あと、今、coauthorの話も出てきました。これは北村先生の講演の内容とも関係するわけですが、そういう意味でジャーナルの編集の責任というのは非常に大きいと考えています。
 だいぶ時間が過ぎてきましたが、全体を通じて、総会やシンポジウムに対して、何かご意見等がありましたら。どうぞ。

日本先天異常学会:日本先天異常学会では実は最近、proofになった、著者校正になった段階で、著者を追加してほしいという申し出がありました。そのときは、一応全員のサインをいただきまして追加を認めたのですが、他の学会ではどのような対応をしているのか、あるいはどういう対応がふさわしいかというサジェスチョンをいただければと思います。

吉岡委員:これはもし、本学会はこの点に関して何かポリシーがあるということがあったら、ご意見をいただければと思います。 あるいは今の例は著者校正の段階で著者を増やしたいということでしょうか。

榎本 裕日本泌尿器科学会編集委員会編集主幹:今、ご質問にあった点はCOPEのガイドラインにも載っている話だと思います。私どもの学会でも似たようなケースがありました。
 COPEに載っているのは、著者全員が新しいauthorを入れることに同意しているということを書面でいただくということと、新しいauthorのcontributionについて説明をしていただく。その2点だったと思います。私どもの学会もそういう方針でやっています。

吉岡委員:ということは、それを認めてもよいということですね。

榎本 裕日本泌尿器科学会編集委員会編集主幹:そうせざるをえない。逆にその2つがちゃんとあればよいのだと思います。

吉岡委員:分かりました。
 では、各学会にお聞きしようと思いましたけれども、今、一応COPEのほうでの方針を示していただきました。
 どうぞ。

日本動脈硬化学会:似たような話になるのですが、correspondenceを今のような校正、あるいは掲載が決まってから追加をしてほしいということがありました。correspondenceから連絡があると考えればそれでもよいのかもしれないのですが、通常は責任者というような認識が多いものですから、いろいろ議論をして、そのときは私の考えとして、もう決めたことだったので拒否しました。先生方でcorrespondenceを2名にする、3名にすると規約として決めておけば問題はないのかもしれませんが、後でこのような問題を出されたときに、どのように対応するか非常に悩みましたので、お教えいただきたいと思います。

吉岡委員:いかがでしょうか。難しいケースです。

日本動脈硬化学会:理由を問い、もう一度著者全員の許可を得るということが、今のお答えのヒントかなと思いましたが、ご意見があればと思って、ご質問させていただきました。

吉岡委員:correspondenceというのは、普通は1名ではないのでしょうか。

日本動脈硬化学会:一般的にはそうだと認識していますが、調べますと雑誌によっては2名書かれていたりもするので、大変それが悩ましかったということなのです。

吉岡委員:ガイドライン(案)にもそこまでないですね。やはりここで悩んでいる現状があります。

北村委員長:ガイドライン(案)にauthorの資格を結構書かせていただきましたが、この部分をぜひ読んでいただいてご意見をいただきたいと思います。きわめて未完成で、contributorのこともcorresponderのこともあまり書いてありませんので。
 今回、森口氏の事件においても、報道されてから、自分のcoauthorであることを消してほしいという申し出があったりしまして、それが世界的に見てもありえぬことのようで問題になりましたので、またご意見をいただきたいと思います。

日本小児科学会:ガイドライン(案)のことですが、編集委員会の独立、そしてオーナーとの間の力関係の問題があります。英文誌は多くは企業である出版社が入っていると思いますが、和文誌の場合は、編集長の権限である程度は行えても、理事会マターという現状があります。学会の機関誌という性質上、学術誌としての制約があり、権限をどうするのか。先ほどの倫理面の問題も微妙に絡んでくると思うのですが、ガイドライン(案)に書かれたオーナーという表現がどこまでを占めているのか。和文誌の実情も考えた上でガイドラインを作っていただいたほうが、齟齬が発生しないのではないかと感じました。

吉岡委員:今のご意見を承ったということで。ありがとうございます。

磯 博康日本疫学会JE編集委員長・理事:本日提示されたガイドラインの概要に関して、「ミスコンダクトへの対応」という項目が17ページにあり、COPEの基準に従うことが推奨されるとありますが、そのなかで特に重要な項目に関しては文章化していただきたいと思います。たとえば、「剽窃を強く疑った場合は、著者の所属長へ通告することが重要である」といった文言があれば、学会でも対応しやすくなると思われますので、よろしくご検討をお願いします。

吉岡委員:実用的なガイドラインにしてほしいということであったかと思います。

北村委員長:本日はお忙しいなか、かくも大勢の先生方にお集まりいただきましてありがとうございました。
 元々この日本医学雑誌編集者会議を作ったのは、日本の雑誌の編集の質、ひいては雑誌そのものの質の向上を一緒に考えようということで、ようやく5回を経て、少し実質的になってきたかなと思っています。
 来年は東南アジアの人たちと一緒に議論することになると思いますが、その間、メール等で分科会の先生方にいろいろご相談することも多いと思います。今後とも、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。