日本医学雑誌編集者会議 Japanese Association of Medical Journal Editors

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議事要旨

第2回日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)ならびに日本医学会分科会利益相反会議 合同シンポジウム:シンポジウム

総合討論Q&A

総合討論の質問、応答は下記のとおり(英語質問、応答は省略)

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:COIに関してのご質問等はございますか。どうぞ、いちばん前の方。

日本消化器外科学会:日本消化器外科学会のCOI担当理事をしています、東京医科歯科大学の田邉と申します。曽根先生には、大変勉強させていただいております。外科系は今学会発表のときに筆頭演者だけが過去1年分のCOIを出します。一方、内科系の学会は日本医学会に従って、共同演者も含め過去3年分というように変わりました。しかし、外科系学会はまだまだこれからです。いつまでにどのぐらいまでこの日本医学会、または内科系学会の基準に合わせることを求められているのか、または義務づけられているのか、それとも見本だけ示されていて、われわれがどこまで合わせるかは自由なのか。その辺りを教えていただければと思うのですが。

曽根日本医学会利益相反委員会委員長:私から申し上げますと、いちばん最後のところで、ICMJEから提案していることは、submitted work以外の場合でも関係があるfinancialなCOIがあれば、過去36か月、3年という数字も出されておりますし。それから内科系の場合、臨床研究が1年で終わることはありませんので、3年を1つの期間として設定していると考えております。今後については、ICMJEのそういう点を踏まえれば、3年は1つのスタンダードではないか。それからもし臨床試験、臨床研究が3年過ぎて、まだ4年やっている場合も、それを報告する場合は厳密に3年前まででいいのかといえばそうではなく。関係している企業等があれば、可能な限り自己申告すべきではないかというのが、一般のコンセンサスではないかと思っています。

日本消化器外科学会:勉強すればするほど先生の言われることがとてもよく分かるのですが、一般のほとんどの若い会員達はそれを理解していないわけです。変な言い方ですが、ある程度、日本医学会が、これがもう国際基準なのだから、われわれ分科会にそれに従うことを強く求めているのだというぐらいのことを言っていただければ、すんなりみんなきれいにやると思うのですが、その辺りはどうなのでしょうか。あくまでもわれわれの自主性に任されているのでしょうか。

曽根日本医学会利益相反委員会委員長:COI管理は倫理の1つです。日本の場合、規制が好きで倫理法という法律ができたりするのですが、基本的には倫理問題だと思います。倫理というのは、当然学会によって特性といいますか、専門性や今までのルール、いろいろなからみがあると思うのですね。ですから、外科系が内科系と全く同じでいいかと云えば、違うだろうと思います。その点については、それぞれの外科系専門学会でよく議論していただきたい、外国の外科系学会ではどのように対応されているのか、それから期間はどうなのか。そういった面から結論を出していただければ、それはそれで説明責任は果たせるし、私はいいのではないかと思っています。

日本消化器外科学会:ありがとうございます。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:それでは、どうぞ。所属とお名前をお願いします。

日本精神神経学会:日本精神神経学会の英文誌の編集長をしております、理化学研究所の加藤と申します。われわれの雑誌、『Psychiatry and Clinical Neurosciences』というのですが、そちらではこのICMJEのCOI formを提出してもらっています。しかし、自動的に出てくるステートメントと実際に論文に書いてあるものが違ったりするケースがこれまであったものですから、機械的にフォームどおりにしようかと検討しています。そうするとこのICMJE formの場合は非常に、outside of this workのことも全部書かなければいけないので、とても長くなって、authorの数が多いと論文のページ数のなかでかなりを占めてしまうことになってしまいます。そこで、これをsupplemental informationにはできないかなということを議論していました。曽根先生の最初のプレゼンテーションのときに、ヘルシンキ宣言で刊行物中に利害関係のことを書くようにということがあり、それとICMJEの基準等におきまして、COIをsupplementaryに回すということは可能なものなのでしょうか。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:代わりにお答えします。最近、『The New England Journal of Medicine』などを見ていますと、著者が100人を超えるようなものもあります。そうするとCOIは、ほとんどインターネットで見てくださいということで、誌面で公開している方がむしろ少なくなったと思います。したがって、supplementaryというか、電子的に公開すればいいという理解でよろしいと思います。

日本精神神経学会:どうもありがとうございます。

曽根日本医学会利益相反委員会委員長:ほかにはございませんか、よろしいでしょうか。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:何かご質問はありませんか。医学会でも週刊雑誌を作ろうかという、門田先生、いかがですか。KMSというのは、日本医学会に相当するところです。日本医学会連合に相当するところかもしれませんが。

門田日本医学会長:ここで今、お話をしていたのですが、確かにわが国を代表するジャーナルがなかったというのはその通りです。これをどうするかという点では、今年の9月に日本医師会と日本医学会が協力して『JMA Journal』を出しました。これがまさにそれに当たると思います。まだ実績はそこまでいっていませんが。これと、エディターは皆さんほとんどわれわれのメンバーがやっているということから、これをどうするのかという大きなテーマが新たにスタートしています。ですからこの会のなかでも、そういうこともディスカッションのなかに入れていくべきことかなということをここで話していました。これはこれからの大きなテーマかなと思っています。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:総合討論は、特にテーマは決めていませんので、フロアの先生方から質問、あるいはコメントを。きょうは非常に多岐にわたるお話でしたので、どのような内容でもよろしいですが、コメント、あるいはご質問をいただければと思います。COIの問題や、その前のジャーナルの編集の問題等で、ご質問やご意見はございますか。特に組織のCOIは非常に難しい問題で、大学、学会、病院などが企業から支援を受けているというのをdisclosureすべしということのようですが、ご意見等はございますか。医学雑誌の編集のほうで何かご質問やご意見などはございますか。よろしければどうぞ、オブザーバーの方。

仲田洋美神宮外苑ミネルバクリニック院長:日本内科学会、専門医部会の仲田洋美と申します。私の意見なのですが、アメリカには1990年代から法律で研究のデータを捨てたというか、疑義が挟まれたときに研究のデータを出せなかった人は、理由の如何を問わず黒とみなすという規定がはっきりございます。ディオバンのときにわが国にそれがなかったからといって、研究データが出せなかった小室先生が黒ではないということで、日本医学会の幹事に出てきたり、日本循環器学会の代表理事に出てきたりということに関して、私は末端の専門医ですが、非常に残念に思っております。それに関して、日本内科学会の今年の総会で、小室先生が理事に出ておられるということなので疑義を挟みまして、かなりそこで物を申しましたが、やはり会場からは小室先生は黒ではない、おまえは何を言っているのだという意見が強く出てきてしまいます。
 そして今回、臨床研究法ができましたが、そのなかでデータをきちんと管理しなければいけないという規定はあるのですが、それが出せなかったときにそれを黒とみなすという規定がないのです。わが国はこのままでいいのか、捨てたらそのまま誰も何にも問われない。一応50万円の罰金はいただきます、臨床研究法のなかにありますから。ですが、それだけで済んでしまう。そういうことで本当に良いのでしょうか。臨床研究がだんだん下火になっていっていることが非常に問題になっているのは、誰しも思っていることでありますが、やはりそういう環境をきちんと整備しなければ、世界から信用を取り戻すことができないのではないかと私は思います。
 それともう1つ。昨今、アメリカでCOIの開示が不適切であったということで、結構大物の乳腺の先生が、Cancer Centerを辞任するという事態が報道されました。日本でもCOIの不適切な開示による論文投稿、『The New England Journal of Medicine』への論文投稿が、京都大学で非常に問題になっていると言うことは、皆さんご存知だと思います。そういう方が、やはり日本外科学会の理事に京都大学枠からなってしまっているということを、われわれ平民からみると非常に分かりにくい。どうしてそういう疑義を挟まれている方たちが闊歩してしまう世の中なのかということに関して、われわれ末端の人たちはすごく疑問に思っているということを、ぜひ分かっていただきたく存じます。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:ありがとうございました、ご意見として承ります。昨今、この役にあって不正論文、ミスコンダクトをいろいろみていると、おっしゃるとおり、データが紛失しているものが多いですね。ちょうどコンピュータが壊れたとか、ちょうどそこのページだけデータがないということがあります。われわれは、実験ノート等の書き方、実験ノートがバインディングではだめであるとか、コンピュータはバックアップをしっかりとる、あるいは紙で残すということも指導していただきたいと、多くの学会の人たちにはお願いしています。徹底しているかどうかは分かりません、そういう活動はどんどんやっていきたいと思っています。ありがとうございました。

曽根日本医学会利益相反委員会委員長:今の提案と関連してですが。今回、倫理、それから利益相反管理を含めて、いかに各分科会が教育研修のなかで必須単位として位置づけられているかというと、半分ぐらいだったと思います。研究倫理、今のデータのこともそうですが、臨床研究法でかなり制限、制限という動きのなかで、研究倫理の考え方、それから法的な面も含めて、若い会員を対象に学会で教育していただきたいというのが、私からの要望です。
 私が臨床研究のCOI管理に関わり始めて、もう15年になります。当時、文科省の医学教育課のなかに産学連携推進室があり、日本でもおそらく欧米でみられるような、産学連携に伴ういろいろなスキャンダルが出てくるだろうということで、文科省では特に臨床研究に関してスキャンダルが日本で出てこないようにということで、当時、国立大学医学部長会議に、研究倫理委員会がございまして。ちょうどそのときに委員長をしていた関係で依頼されました。この時に初めて日本で各医科系大学を対象としたCOIマネージメントの指針を作るためのガイドラインを出したのですが。それが2006年でした。その後の15年間を振り返ると、かなり研究倫理、それからCOI管理も広がってはきていますが、まだまだ脇が甘いといいますか、認識が乏しい。その大きな原因は、倫理なんて私とは関係ないという考えが研究者に多いですね。それも、トップになればなるほど、そんなのは分かっているよという傾向があります。ぜひ、各分科会においては、倫理研修、COI研修も含めて、専門医資格更新に必須の単位としてお願いしたいというのが私の希望です。
 私もあちこちの学会の教育講演に行きますが、学会によっては本当に10人、20人というようなところ。それから日本婦人科腫瘍学会では単位化していて、何百人の参加という感じです。できればやはり単位化していただいて、研究倫理はこういうものだ、COI管理はこういうことだ、何が問題なのかを、臨床研究法の中身も含めて周知をお願いしたい。本日、来ている先生方は編集委員会委員長や、あるいは利益相反委員会委員長ですのでぜひやっていただきたいと思います。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:同じ司会ですので、全く同じ意見です。教育はとても大切ですので、倫理、COI、あるいは編集に関わる問題を、ぜひ分科会の総会等でやってほしいのは山々です。されど、専門医の資格や更新でスタンプラリーのようなものが起こっていますよね。実質を伴わず、ただそう会場で話だけ聞いて、それで判子をもらってしまうという。そうすると、逆効果のように思います。
 ぜひもっと小さい、地方会やそういうところで症例検討とか、あるいは大学ごとにやるとか、実質的な教育をしていただけると良いなと思っています。幸か不幸か、たとえば今現在機関誌の委嘱でCOIの事例の問題が報道されているように聞いていますし、そういう検討する事例は事欠かないというか、ありますので、ぜひそういうのを事例にして、実質的な教育をしていただきたいと思います。何かご意見はありますでしょうか。何か取り組みで、こういうユニークな取り組みをされている学会があれば、教えていただきたいのですが。COIの教育とか。
 ほんの少しだけ時間が余っていますので、本当はいちばん皆さんも思っていらっしゃることですが、どうしたら日本の臨床研究がもっと増えるでしょうか。増えて活発になって、世界に影響力を及ぼすような臨床研究が増えるでしょうか。金も人もないと愚痴ばかり言っていても仕方がないのですが。『New England Journal』という本の翻訳を少し私は手伝っているのですが、年間に日本から出るのは、ならすと0.8本です。年間に1本もないです、3年に2本というくらいのイメージです。もっともっと投稿してくださいとお願いしたいとは思うのですが、New Englandのほうも日本からの投稿を待っていますと言ってくれるのですが、なかなか少ないです。いかがでしょうか、やはりお金でしょうか。曽根先生の話ですと、製薬企業からの支援が2/3になってしまっています。AMEDもなかなか取れないといえば取れないですし。それとも人でしょうか。皆さん医師が専門医のほうへいってしまって、研究しようという人が少なくなっているとか。大学院で博士号を取ったらもうやめてしまうとか、いろいろな問題が指摘されていますが、何かご意見はありますでしょうか。

曽根日本医学会利益相反委員会委員長:先ほど申しましたが、臨床研究法がこの4月より施行されて、COI管理基準は制限、制限というニュアンスで、かなり厳しい状況にされていますが。先生方の学会で、私が心配するのは、たとえば再生医学や希少疾患を積極的にやっておられる医師の場合、要するに余人をもって代えがたしという領域も多いと思うのですね。個人収入が250万以上といいますが、250万以上の研究者がそれでダメというのではなく、やはりもっと柔軟に対応すべきと思います、それだけの理由といいますか。希少疾患や再生医療、ほかにもいろいろあると思いますが、そういう点で工夫されている学会、あるいは研究機関でも構わないのですが、ありますでしょうか。
 認定臨床研究審査委員会も私は非常に問題があると思います。全国的にスタンダードな審査法が、研修やいろいろな形で標準化が図られているかというと、そういう取り組みはなされていない。大学は倫理などの審査はできない、全くだめだというのは厚労省の前課長も言っていたのですが。本当に今の状況でいいのかと、私は強く疑問に思いますね。私はもうOBですから外から見ていますが、研究機関がきわめて消極的というか。完全に厚労省のいいなり、文科省のいいなりという感じがするのですが、いかがでしょうか。そうではないというご意見はございませんか。
 長い間、COI管理を取り組んでおりますと、これからの臨床研究がどうなるのか心配しております。診療ガイドライン作りには臨床研究がより一層必要なのに、金はなくなる、人は育たなくなる、ルールはどんどん厳しくなる。本来、倫理と法律は別個だと思うのですが、日本はすぐ倫理法という形で法律化してしまう欠点がありますので、それにdisturbされないように産学連携による臨床研究の推進に頑張っていただきたいと思います。

北村日本医学雑誌編集者組織委員会委員長:あまりフロアからご意見はなかったのですが、先生方の心にいろいろな、さざ波か大波か分かりませんが、少しでも波を立てることができたら良かったと思います。