声明文
平成24年2月28日
「がん対策推進基本計画(素案)」における喫煙率の目標に関する声明
日本医学会長 髙久 史麿
日本癌学会理事長 野田 哲生
日本癌治療学会理事長 西山 正彦
日本臨床腫瘍学会理事長 田村 和夫
喫煙は、肺がんをはじめとする多くのがんの原因となるほか、慢性気管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患や、心筋梗塞や脳卒中などの心・血管系疾患の原因となることが国内外の研究によって確立しています。また、喫煙者のみならず受動喫煙にさらされる周辺の人たちにも肺がんや心筋梗塞、胎児を含めた発育障害など多様で重大な健康障害をもたらします。
我が国における年間死亡者数は120万人程度ですが、このうち約1割にあたる12~13万人が喫煙によるものとされ、また、がんによる年間死亡者数は約35万人ですが、この4分の1程度が喫煙によるものとされています。
国際的にも、平成17年2月にWHOたばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約(FCTC)が発効しており、我が国もその締約国となっています。FCTCの目的は「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」であり、「喫煙率の低下」と「受動喫煙の防止」の対策をすすめることは、FCTC締約国の責務であり、国民を守るために極めて重要かつ喫緊の課題です。
こうした中、現在、政府において「がん対策推進基本計画」の見直し作業が行われており、去る2月1日に「がん対策推進基本計画(素案)」が示されました。この中には、がん予防の個別目標として「喫煙率については、平成34年(2022)年度までに、禁煙希望者が禁煙することにより成人喫煙率を12.2%*とすることと、未成年者の喫煙をなくすことを目標とする。更に、受動喫煙については、行政機関及び医療機関は平成34(2022)年度までに受動喫煙の機会を有する者の割合を0%、職場については、事業者が「全面禁煙」または「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」のいずれかの措置を講じることにより、平成32年(2020)年までに、受動喫煙のない職場を実現することを目標とする。また、家庭、飲食店については、喫煙率の低下を前提に、受動喫煙の機会を有する者の割合を半減することにより、平成34(2022)年度までに家庭は3%、飲食店は15%とすることを目標とする。」と記載されています。このように喫煙率及び受動喫煙の目標値が明確に盛り込まれることは非常に重要であります。
私どもはこの「がん対策推進基本計画(素案)」の内容を高く評価し、強く支持することをここに声明文として公表します。
*:12.2%=19.5%[現成人喫煙率]×(100-37.6[禁煙希望者率])/100