お知らせ

平成27年8月5日

新しい外科的治療の臨床応用に際しては十分な体制の整備を

日本医学会長
髙久 史麿

 2013年にDiovan(バルサルタン)、CASE-J(ブロプレス)、SIGN(タシグナ)と呼ばれる臨床研究に関する事件が相次いで報道され、特にDiovanに関しては日本高血圧学会の役員の方々が深く関係していたため、日本医学会は「バルサルタン不正問題に関する日本医学会の見解」を2013年8月29日に発表、さらにその後「わが国の不正な臨床研究に関する日本医学会の見解」を同年11月8日に公表している。

 2014年になって千葉県がんセンターにおける腹腔鏡下手術による患者11名の死亡、群馬大学における腹腔鏡下肝切除による患者8名の死亡、さらに本年になって神戸国際フロンティアメディカルセンターにおける生体肝移植における患者死亡が報道されている。

 2013年は医学研究が問題となったが、最近の問題はいずれも臨床に直接関連し、しかも多くの患者が死亡している点で問題はより深刻である。上記の問題の中で群馬大学及び千葉県がんセンターの事件に関しては、2015年の4月並びに7月に調査委員会報告が出されている。その報告書を読む限り、両事件に関して共通の問題点が指摘されているが、群馬大学の問題が特に深刻である。

 両事件に関して共通して言える事は保険適応外の手術例で、倫理審査委員会の審査を受けていなかった事、インフォームドコンセントに関する病歴上の記載が不十分であった事、死亡例に対する症例の検討が不十分であった事である。特に群馬大学ではデスカンファレンスを実施した資料が残っていなかった事を報告書が指摘している。また術者が、十分な能力を持った助手のサポートを受けていなかった場合のある事が両事件で指摘されており、この点も特に群馬大学の体制の不備が痛感された。日本医学会としては今回の事件に関連して群馬大学医学部が第1外科、第2外科というナンバー制外科体制を続けてきた点を問題視したい。群馬大学外科の現体制の問題点は、9年前の生体肝移植の事故の際に既に指摘されていたのにもかかわらず、その後も依然として保持し続け、その結果として今回の事件を起こしたことは重大な問題であると考える。その意味ではこの古い体制の改革を進めなかった歴代の医学部長、病院長の責任も重いと言わざるを得ないであろう。今回の事件を契機としてナンバー制外科診療体制を一刻も早く改め、臓器別の外科診療体制を整えることを勧告したい。

 腹腔鏡下手術は、患者への負担が少ない、極めて臨床的意義の高い手技であると同時に、手術によっては術者に高度の技術が要求される。日本医学会は新しい外科手術の発展を願うものであるが、個人あるいは施設の業績の向上を望む余り、不十分な体制下での新しい手技の導入には極めて慎重であるべき事を改めて強調したい。

 なお、神戸国際フロンティアメディアセンターの事件は国際的な問題が絡んでいると考えられるが、同センターから事故報告書が速やかに公表されることを要望したい。

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