研究倫理教育研修会

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議事要旨

第5回研究倫理教育研修会

開会挨拶

門田 守人(日本医学会長)

 こんにちは。会長を務めております門田です。本日は第5回研究倫理教育研修会に沢山の皆様方に集まっていただき本当にありがとうございます。
 この研修会は日本医学会と日本医学会連合、本質的には大きく変わりませんが、特に倫理研修といった意味において関係する4委員会に企画してもらっております。日本医学会連合研究倫理委員会、同じく日本医学会連合診療ガイドライン検討委員会、それから古くから立ち上がっております日本医学会の日本医学雑誌編集者組織委員会、日本医学会利益相反委員会です。
 この4委員会から、今の段階でわれわれが学ぶべき重要な問題、世の中でいろいろな形のものが出てきておりますので、そういう状況に即した形で、年1回研修会として開催しております。そういう会に多くの皆様方にご参加いただくことは、われわれにとっても非常に重要なことだと思っています。
 少し話が変わるのですが、4月27日に名古屋で第30回日本医学会総会2019中部が開催されました。皆さん方も関係しているということで参加していただいていた方もいらっしゃるかと思いますけれども。30回といっても4年ごとの30回ですから約120年の歴史を持つ会で、しかも30回目の節目で大きく展開している感じのところです。明治35年にスタートしたということですが、明治維新でわが国が大きく近代化していく中で日本医学会が創設され、それからずっと4年ごとの会を開き、30回に至ったということです。
 そこで日本医学会長として、会長講演をいたしましたけれども。考えてみますとこの120年弱の間に、わが国の医学・医療の進歩、プロフェッショナル・オートノミーとして素晴らしい進歩があったことは、皆様も実感としてもっていらっしゃると思います。しかし、その120年の間に起きたことは、そんなに簡単なことではございません。特に進歩は素晴らしく、多くのノーベル賞受賞者、アメリカに次ぐような数の受賞者を出していることからみても、わが国がどのように素晴らしく発展してきたかということはわかるわけです。
 しかし、一方では、現在、研究力の低下、研究費の低下、若い研究者の不足という課題も出てきています。そういった意味で、最近でも話題になっていますけれども、わが国の研究論文、特にトップ10、あるいはトップ1%というようなところに入ってくるわが国の論文がどんどん減っているということ、ごく最近も文科省のほうのデータとして公表になっていましたけれども、そのような状態にあります。
 さらには、2018年、有名なジャーナルScienceの中に、葛飾北斎の絵をもじられて、わが国から不正論文・取り下げ論文がこんなに増えているという、非常に恥ずかしいような絵が載ったということ等々を考えていきますと、われわれとすれば本当にいまどうあるべきなのか、非常に重要なタイミングにかかっていると言わざるを得ないとも感じられるわけです。
 いろいろな状況によって変わっている社会情勢の中で、私たちが変えてはならない、変わってはならない、あるいは正しくやっておかなければならないものがはっきりしているのはこの医学といいますか、いわゆる倫理、そういうものに対する考え方、そしてそれの対応の仕方の重要性は言うまでもないことです。他には財政的なことがいろいろありますが、そういうものの難しさはあると思いますけれども、われわれの内面から出てくるはずの倫理観を、しっかりと醸成していくことは言うまでもないことです。そういった意味において、非常に重要な研修会が、年に1回開催しているこの研修会ではないかと思ってます。
 本日はそれぞれの分科会・学会の代表的な方がいらっしゃっていると思いますが、それぞれの分科会・学会の中で、この情勢の中をいかにやっていくかの検討をぜひよろしくお願いしたいと思うのであります。
 4委員会委員長の先生方、座長席に座っておられます日本医学会連合研究倫理委員会委員長の市川先生、日本医学会連合診療ガイドライン検討委員会委員長の南学先生、日本医学雑誌編集者組織委員会委員長の北村先生、日本医学会利益相反委員会委員長の曽根先生。この4人の先生方に進行を務めていただき、この半日ほどの研修会を実りあるものにしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。