研究倫理教育研修会

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議事要旨

第5回研究倫理教育研修会

学術データは誰のものか-悪徳雑誌からデータ・シェアリングまで-

有田 正規(国立遺伝学研究所生命情報・DDBJセンター長・教授)

 近年は営利目的の学術出版社が乱立し、悪質なケースも少なくない。しかし、糾弾に値する場合ですら、既出論文の扱いや、他社を買収している場合等、問題は山積する。また悪質さの程度も様々であり、老舗の有名出版社だから善良とは限らない。学術出版の問題は、大量データ時代に学術知識はどうあるべきか、今後データをどう再利用可能にするか、研究者や学会が真摯に考えて取り組むべき事項である。
 その際に考慮すべきは、歴史を踏まえた形での学術出版とデータベースの在り方である。両者とも情報の公開(publication)を担う媒体でありながら、データベースの社会的地位は非常に低い。学術出版社に戦略面で負けてきた。社会学の分野では1980年台にデータ共有について議論があり、研究計画時に共有ポリシーを作成することやリアナリシスの重要性が認識されている。しかし生命科学では実現していない。オープンサイエンスは新しい概念ではない。歴史を見据えた上で、データをどう出版すれば再利用できるのか、考えるべきである。真摯な学会誌はSupplementary Informationの取扱いルールを定め、再利用を促す努力をするのがよい。

スライド資料(PDF/0.99MB)