研究倫理教育研修会

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議事要旨

第5回研究倫理教育研修会

閉会挨拶

飯野 正光(日本医学会副会長)

 副会長の飯野です。本日は研修倫理教育研修会に各加盟学会・分科会の代表の先生方に多数お集まりいただき、長時間にわたって参加していただきましてありがとうございます。また、演者の先生方には大変中身の濃い発表をしていただきまして、私も大変勉強になりました。
 今回この研修会を企画しています4つの委員会、医学雑誌、利益相反、診療ガイドライン、研究倫理、この4委員会に共通しているのは医学会と社会の接点にあるのではないかと思います。つまり、われわれ医学研究者が社会に対して発信する論文発表、あるいは学会等が中心になって世に出す診療ガイドライン、このような活動に関連して行われる産学連携。これらの活動に関係するのが4委員会であります。
 本日、特に強調されたことは、そうしたことを行う際に、われわれの行動に対して透明性を確保することが大事だということだと思います。特に個人あるいは組織のCOIを開示することが求められており、COIが有ること自体が問題というより、COIを開示してバイアスリスクがあるのであればそれを国民に対して、読者に対して開示しておくことが大事だと理解しています。
 そうした中で、日本医学会・日本医学会連合は誰のためにあるのかということですが、もちろん医学研究者とともにわれわれは活動しているわけですけれども、本日、中山先生あるいは南学先生のお話を聞きますと、それはそうなのだけれど、最終的にはわれわれは国民のため、あるいは患者さんのために活動しているのだということだと思います。実際に日本医学会連合の定款では、医学に関する科学及び技術の研究促進を図り、医学研究者の倫理行動規範を守り、わが国の医学及び医療の水準の向上に寄与することを目的としていますので、最終的には国民に還元するというような形でわれわれは活動しなければいけない。そういうことが本日のディスカッションの中で再確認されたと思います。
 一方で、われわれ医学研究者側にもいろいろ問題があることもある、あるいは心の隙があるということも事実であり、それをきちんと自覚しておく必要があると思います。たとえば、業績至上主義的なところが医学雑誌の商業主義をある意味助長しているのではないか。あるいは悪徳雑誌の跋扈を許しているのではないか。あるいは本日はあまり話題になりませんでしたけれども、論文のねつ造等の問題があります。一部の研究者だと思いますけれども、たとえばディオバン事件というようなことが行われて、それが臨床研究法の制定に至っています。ただし、臨床研究法はディオバン事件のようなものを規制するために制定されたはずなのに、実はそれとはかけ離れたような研究まで含んで規制するような形になってしまっていて、現場が非常に混乱している。そういう発表が市川先生からありました。その結果として、わが国の臨床研究全体が抑制されてしまっている。そうした状況では、結局この法律は国民あるいは患者のためになっているのかということが問題になっているのではないかと思います。
 このようなことから、日本医学会・日本医学会連合は、われわれの活動の透明性をさらに高めていって、組織の目的、つまり医学及び医療の水準の向上に寄与することに邁進しなければいけないと思った次第です。
 会場の先生方、それから演者の先生方にお礼を申し上げまして、私の閉会の挨拶といたします。どうもありがとうございました。