大根田絹子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
大規模な一般住民のゲノム情報は、ヒトゲノム情報を用いた医療や研究を遂行するうえで必須の情報である。東北メディカル・メガバンク(TMM)計画は、個別化予防・医療の実現を理念とし、一般住民15万人が参加する前向き追跡コホート調査である。TMM計画で行っている「遺伝情報回付事業」とは、アクショナブルな遺伝性疾患の病的バリアント保有者にゲノム情報を返却し、医療機関に紹介する取組である。
2015年から小規模な研究を実施してプロトコールを整え、2022年から5万人の全ゲノム解析情報を用いて、遺伝性乳癌卵巣癌とリンチ症候群の病的バリアント保有者約100人に遺伝情報を返却した。このうち参加者の約80%は医療機関を受診し、癌の発症リスク低減や早期発見のためのフォローアップを受けている。一方、約20%は医療費や通院の負担から医療機関受診を希望しなかった。本研究では、一般住民にゲノム情報を返却し、適切な相談支援を行う実践例を示し、その社会実装に向けた課題を明らかにした。
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