
井上悠輔(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻医療倫理学教授)
医療や研究の現場における人工知能(AI)の活用が拡大するなかで、その倫理的意義や制度的整備の在り方をめぐる論点が多様な形で浮上している。本講演では、「AIの価値」や「判断の帰属」をめぐる構造的問題を出発点に、海外の倫理規範をめぐる議論、市民との認識のずれ、国内の教育・政策・研究倫理に関する課題を概観する。
特に医療領域では、AIを補助的知能(Augmented Intelligence)として捉える提案がある一方で、説明責任や信頼性の確保、患者・市民の理解との乖離が課題となっている。さらに、個人用AIや自己生成アプリの普及により、従来の制度では対応しきれない新たな局面も生じている。今後、医療・研究・教育の各現場において、人とAIの共進化を見据えた倫理的対応の再設計が求められる。
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