日本医学会ガイドライン

「日本医学会 医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」Q&A

(平成23年8月 現在)
日本医学会臨床部会利益相反委員会

1. 医学研究に係るCOI(利益相反)について | 2. 日本医学会のCOIマネージメントに関するガイドラインに関して3. COI申告とその申告書提出に関する質問4. COIマネージメント(管理)の意義と実際について

1. 医学研究に係るCOI(利益相反)について

Q
日本医学会では、臨床研究のCOIマネージメントではなく、「医学研究」としていますが、どのように定義しているのでしょうか?
A
日本医学会は、予防、診断及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解の向上並びに患者の生活の質の向上を目的として行われる産学連携の研究であって、生命科学研究や基礎医学研究から人間を対象とする臨床医学研究(個人を特定できる人由来の材料及び個人を特定できるデータに関する研究を含む)、臨床試験までの研究を広く医学研究として定義し、COIマネージメントの対象と位置付けています。
Q
産学連携で臨床研究を行う場合、何故、COIが問題になるのですか?
A
医学研究の中でも、人間を対象とする臨床研究を産学連携で行う場合に考慮を要すべきは、他の領域の産学連携研究とは異なり、臨床研究の対象・被験者として健常人、患者などの参加が不可欠であるという点です。従って産学連携より臨床研究に携わる者には、一方において研究者として資金及び利益提供者である製薬企業などに対する義務が発生し、他方においては被験者の生命の安全、人権擁護をはかる職業上の義務が存在します。同一人におけるこのような2つの義務の存在は、単に形式的のみならず、時には実質的にも相反し、対立する場面が生じます。1人の研究者をめぐって発生するこのような義務の衝突、利害関係の対立・抵触関係がいわゆるConflicts Of Interest(COI;利益相反と和訳されている)と呼ばれる状態です。換言すれば産学連携で行われる臨床研究は形式的に見るかぎり、ほとんどCOIの状態にあると言えます。
Q
臨床研究とは漠然としていますが、具体的にはどこまでの研究をいうのでしょうか?
A
「臨床研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、ヒトを対象とするもののことです。ヒトを対象とする医学系研究には、個人を特定できるヒト由来の試料および個人を特定できるデータの研究を含むものとしています。個人を特定できる試料またはデータに当たるかどうかは厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」(2008年7月31日全部改訂)に定めるところによります。
Q
欧米では、医学研究のCOI自己申告はどのようになっているのでしょうか?
A
多くの学会や国際的な雑誌では、演題発表時および学術雑誌へ発表する場合にCOI自己申告書の開示が義務付けられています。
Q
COIマネージメントは本来、研究者が所属する機関・施設で行うものと理解していましたが、分科会のCOIマネージメント(管理)とはどのようなものですか?
A
会員の多くは所属施設や機関で臨床研究を実施し、得られた成果を各専門学会で発表します。産学連携にて行われる臨床研究の実施とその発表という2つのステップがあり(ガイドライン図1参照)、それぞれにおいて透明性、公明性が求められることから、所属機関・施設だけでなく、学会発表においてもCOI状態の開示が求められます。所属機関・施設に対しては、当該臨床研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時にCOI自己申告書を施設長へ提出し、当該施設においてCOIマネージメントを受けることが求められております(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」)。一方、日本医学会のCOIマネージメントに関するガイドラインは、日本医学会分科会が行う全ての事業を対象に、これを行う分科会関係者のCOI状態を自己申告によって開示させ、これにより分科会関係者の社会的・倫理的立場や責務を明確にすることを目的としております。
Q
産学連携による臨床研究や臨床試験を行う上で、COIの観点から研究者(医師)が遵守すべきこととは何ですか?
A
臨床研究や臨床試験に携わる医師としての社会的な義務と医療専門家である医師としての義務が同一研究者に課せられるが、これら2つの義務の対立が現実化した場合、医療専門職にある研究者は、対象である被験者の人権擁護者としての立場を最優先し、被験者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられています。従って、資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めるようなことが、絶対あってはならないし、社会的にも許されない行為と言えます。
よって、研究者(医師)としては、透明性の実現に努めるとともに、社会から疑念を受けないように常に配慮することが求められます。
Q
医学研究を行ったり、その成果を発表したりする場合、企業からの資金提供が悪いような印象を受けますが…
A
そうではありません。国策として科学技術基本計画が推進されており、企業から正当な報酬を受けることや、医学研究の推進に向けて資金援助をしてもらうこと自体や貰うこと自体には全く問題はありません。それらの事実をきちんと大学などの施設や、分科会などの学術団体が透明性を確保して正確に把握しておくことが重要であり、産学連携による臨床研究の実施に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が既に開示されておれば、分科会として社会への説明責任を果たし、適切に対応することが可能となります。
Q
COI状態の開示を義務付けることは、企業との産学連携活動を阻害することにつながるのではないでしょうか?
A
COI状態の開示は、あくまで自己申告に基づくものであり、産学連携活動を規制したり、個人収入を減じるための取り組みをしようとするものではありません。臨床研究を発展させるには、産学連携を透明性、公明性を持って推進することが重要と考えており、適切に臨床研究が行われ、その成果が適正に公表されることが、現場での医療改善に結びつくと考えられています。
Q
日本医学会のCOIガイドラインに従い、COI指針(COIをマネージメントする指針)を策定すれば、法的責任は回避できますか?
A
本ガイドラインは、分科会の事業活動を公明性、中立性を担保・実施するために制定したもので、研究者個々人に何らかの法的責任が発生した場合にそれを回避するために制定したものではありません。具体的には、申告内容の真偽、申告外の利益取得、申告書の保管期限経過後に発生した問題等においては法的責任を問われる可能性はあります。一般的に言えることですが、分科会の指針や規則・細則には、その上位にある「法令」の適用を回避させる効力がないことをご理解下さい。
このページのTOPへ