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日本医学会 COI管理ガイドラインにかかる一部改定の理由

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 臨床研究とその成果を重要な根拠とした診療ガイドラインの質や信頼性を損なう事案(COI申告違反、研究不正など)が発生し社会問題化している。特に、研究者主導臨床研究にかかる産学連携活動の適正化が大きな課題となっており、医学界、業界および行政はそれぞれに改善策、防止策に向けた取り組みが強化されている。

 日本医学会は、2017年に大幅な改定を行ない「日本医学会 COI管理ガイドライン」を公表すると共に、新たに「日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス」を策定し公表した。

 現在、我が国の第5期科学技術基本計画(平成28年~令和2年)によると、医学系研究機関では疾病の予防法、診断法、治療法の開発研究を推進するため、「組織」対「組織」の本格的産学連携の拡大策として共同研究、受託研究、奨学寄附金受け入れ、知的財産および技術移転、共同開設センター開設などの取り組みが求められ、政略的に産学連携活動を強化している。しかし、研究機関が医薬品等の製造販売企業から多額の寄附金を受けたり、あるいは特許権を特定企業へライセンスしていたり、株式等を保有していたりすると研究機関自体に潜在的な組織 COI(institutional COI)が発生する。一方、日本製薬工業協会加盟の企業は「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」(2011 年1月)に従い、①医療機関、②研究機関、③医療関係団体、④財団など、⑤医療関係者等、⑥医学、薬学系の他、ライフサイエンス系の研究者への支払いをすべて公開している。その結果、特定の企業が深刻なCOI状態にあれば、社会からは臨床研究の実施やその研究成果の公表、さらには診療ガイドラインの策定の過程で自ら研究機関の利益を優先するような判断がなされたり、意思決定が行われるのではないかとの疑義が発せられると研究の公正性や信頼性が損なわれる。ICMJEも COI disclosure form として著者個人の COI だけでなく、所属する研究機関の組織 COI の開示も論文発表時に求めている。そこで今回、日本医学会は、組織COI事案をわかりやすく例示し、研究対象者および患者が不利益を被るリスクを回避するためのCOI管理として医学系研究機関自体とともに、日本医学会傘下にある各分科会のCOI状況についても所定の様式にて開示公開することを求めるため、今回、COI管理ガイドライン2017の見直しを行い、132分科会からのコメントを求めて一部改定した。