臨床研究における被験者の保護と倫理の確保に関する声明
平成20年8月1日
日 本 医 学 会
会長 髙 久 史 麿
臨床研究は、医療提供のエビデンスの源となるとともに、医薬品・医療機器などの新たな治療法の実用化を担っており、医療界のみならず、患者・国民を含む社会全体の期待が高まっていることから、医学界としても積極的にその推進に努力しているところです。
一方、臨床研究を進めるにあたっては、被験者の人権等倫理性の確保が極めて重要であることから、世界医師会の「ヘルシンキ宣言」を基礎とする「臨床研究に関する倫理指針」(平成15年厚生労働省告示)等、臨床研究の信頼性確保策が講じられてきました。
日本医学会会員は、先進的な医療技術研究を推進するにあたって、これまで同指針をはじめとして、被験者の保護に尽力してきました。そのことは、責任ある医療人として、臨床研究に対する患者そして社会からの信頼を確保していく上で、極めて重要なものと考えます。
しかしながら、こうした多くの日本医学会傘下の学会員たちの努力の一方で、最近、研究倫理や被験者の同意を軽視した研究事例がありました。このような行為は、医学研究者としてあってはならないことであり、高度の職業人としてのモラルが問われる極めて遺憾な事例であります。
今般、厚生労働省では、「臨床研究に関する倫理指針」が改定され、被験者の保護や透明性等倫理性の確保について、一層の向上が図られました。
日本医学会としては、臨床研究における被験者の保護は、医療人の責任としての自発的な取組みにより、確保されていくべきものと考えており、日本医学会傘下の学会員それぞれが職業倫理の向上を追求していくことを強く求めます。
今回、改定された国のガイドラインである「臨床研究に関する倫理指針」において、求められている臨床研究の被験者の保護や透明性を向上するような各種取り組みに対して、日本医学会傘下の学会員各位においても、この趣旨をご理解の上、ルールに対する意識を高め、指針等の遵守、医学研究実施のマナーの向上に一層努められるよう要望し、日本医学会の声明といたします。