日本医学会

お知らせ

動物愛護管理法の見直しに際して実験動物に対する配慮への要望

平成23年9月28日

環境大臣
細野豪志先生

日本医学会
会長 髙久史麿

動物愛護管理法の見直しに際して実験動物に対する配慮への要望

 平素より医学研究推進のためにご尽力賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、医学研究や医療技術の開発において動物実験は必要不可欠な手段であり、動物実験が人類の健康増進、福祉向上のために果たしてきた役割は大きなものがあります。日本医学会は、わが国の医学研究や医療技術の開発に必要不可欠な動物実験が、学術研究および製薬・医療行政の下で、科学的な信頼性の確保と動物愛護のバランスに配慮しながら、適正に実施されてきたと認識しています。

 日本学術会議の「動物実験に対する社会的理解を促進するために(提言)」が2004年に公表されて以来、動物愛護管理法を所管する環境省、学術研究を所管する文部科学省、製薬・医療行政を所管する厚生労働省等の関係省庁の協議と国民的議論を経て、2005年に動物愛護管理法の改正、2006年に文部科学省、厚生労働省、農林水産省による動物実験の実施に関する基本指針が制定され、さらに日本学術会議による詳細な指針「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」が定められました。

 2006年に完成したこの新制度は国際的にも認知され、新制度の下で科学的にも動物愛護の観点からも適正な動物実験の実施体制が整備され、新制度の普及、周知は着実に進められ、その実効性を担保する第三者評価制度も所管省庁の指導の下で構築され、動物実験の適正な実施と動物実験に対する社会的な理解が格段に進展しつつあると思います。

 動物実験が医学・医療の進歩、ひいては国民医療の向上に必要不可欠であることは広く認められています。また、実験動物を取り扱う医療機関は「動物実験倫理委員会」を設置して実験動物を使用せざるを得ない理由を、多人数の委員によって極めて厳格に審議し、承認された場合だけ実験動物の使用が許されており、犠牲死させる場合でも、実験動物に過度の苦痛を生じない手段を講じることが許可の条件となっています。各大学医学部や医科大学では毎年「実験動物慰霊祭」を全学的な行事として行っています。

 医学研究に必須な動物実験に際しては、上述の様な慎重な対応を取っています。
 現在進められている動物愛護管理法の見直しの主要課題の6で、実験動物の福祉に関して「届出制または登録制等の規制導入の検討」が取り上げられている様でありますが、医学研究のための実験動物の取扱について、特別な配慮を日本医学会としてお願いする次第であります。